友と話しているマスターを私は遠くから眺めている。人間のように走れる足なんてない。
けれどマスターの安全を確認できる目のようなものならある。それで彼の姿を確かめることができる。
ヘアバンドで纏めたオレンジ色の鮮やかな髪。他の人や私よりも一回り小さい身長。
優しさという強さを秘めているけれど、何処か無鉄砲な幼さを残しているあの表情。
私はあの人の全てが好きだった。決して打ち明けることのない、そして打ち明けることもできない想い。

エンジンの音が響き、マスターの手が私の黒い体を撫でるのを感じた。
子供たちを慰め、デュエルモンスターを操ってきた力強い手。そしてそれが私を走らせる。
「よっし、んじゃブラックバードデリバリー、行くぜ!」
いつもの強気な口癖。本当に返事をしたつもりではい、と心で呟いた。
私が人間だったら…マスターに向かって力強く返事をできるのに…
それでも少しでもマスターの思いに答えたくて、身体中の力を使って速度を上げる。
ホイールオブフォーチュンにも負けない速度。もきっとマスターの贈り物と言えるのだろう。
風を切り、マスターの髪が揺れる。走らせることにも意識を向けつつ、私はまたマスターに見惚れていた。

私はDホイール、マスターは人間。どんなことをしても届かない思い。
それでも私は幸せ。マスターに作られ、マスターを乗せて走り、そして彼を守ることができて。

だからマスター、どうか私の心…ずっと知らないでください。

Wiki内検索

Wikiをはじめる

マイページ