「兄さん、私と十代に何の用なの?」
兄さんの記憶が戻ってしばらくしたある日、私と十代は兄さんに呼び出された。
「うん・・・二人に話しておこうと思うことがあるんだ。」
いつになく真剣な顔に私も十代も緊張を隠せない。
もしかしてさらに記憶が戻ってセブンスターズや闇のデュエルに関する話が聞けるかも知れない!
「明日香・・・十代君をフィアンセに選んだんだってね。」
「「・・・はぁ?」」
十代とハモってしまう。な、何なのよ一体!?
「いやいや、十代君はダークネスを倒し僕を救ってくれた程の男だ。文句など無いよ。」
「ちょ・・・ちょっと待ってよ兄さん!誰がそんな話を!?」
「そこの丸藤(弟)君と枕田さん、それに浜口さんが詳しく話してくれたよ。
テニス部の綾小路君との恋のバトルに勝った十代君が明日香のフィアンセの座を手に入れたって。」
「なっ・・・あ、あなた達・・・!」
振り返ってみると三人とも既に居なかった。逃げ足の速い・・・。
「に、兄さん・・・落ち着いて話を聞いて・・・。」
「そういえば明日香、フィアンセってなんだったんだ?美味いのかそれ?」
「──────っ・・・少し黙ってて十代・・・お願いだから。」
「兄貴、フィアンセってのは婚約者のことっス。兄貴は明日香さんと結婚しなきゃいけないっス。」
丸藤君が戻ってきて、十代に助言してすぐさま姿を消した。す、素早い・・・。
「そ、そういうことなのか!?あ、明日香と結婚するのか俺!」
「アハハハハ!十代君は面白いなぁ。ますます気に入ったよ!」
い、いけない・・・どんどん追い詰められていく・・・。
「ま、待って兄さん。それは成り行きでそういう話になっただけなの。彼とは何でもないの。」
「嘘はいけないな明日香。今まで何度も十代君に抱かれているじゃないか。」
「えっ!?な、何で兄さんが知ってるの!?」

「ほら、やっぱりそうじゃないか。」
「─────っ!」
やられた・・・兄さんはカマをかけただけだったのだ。

「まぁ、そういうわけで、兄として心配なのは夜の営みなんだよ。」
さっきの自爆以降、もはや突っ込む気力も湧かない。黙って兄さんの話を聞く。
「どんなに体の相性が良くても、残念なことに飽きがきてしまう可能性は否定できない。そこで!」
兄さんが巨大なダンボールを取り出す。中に入っているのは様々な職業の制服だ。
「そう!人類の英知の結晶、制服プレイ!数々の夫婦の危機を救ってきた伝説のアイテム!」
・・・兄さん、元気になって本当に良かった・・・・・・はぁ。
「ナース、バニーガール、セーラー服、どれも素晴らしいが・・・僕のお薦めは・・・」
そう言いながら兄さんが取り出した服は・・・
「ブラックマジシャンガール、これできまり!明日香はスタイルが良いからきっと似合うよ!」
ちょ・・・ちょっと待って!こ、こんなの(他のもだけど)恥ずかしくて着られない!
「十代君は幸せ者だなぁ。学園のアイドルにデュエル界のアイドルの服を着せて○○な事ができるんだから。」
あ・・・流石の十代も呆然としてる。
「明日香が学園祭でコスプレをしたときから密かに用意していたんだよ。」
いけない、このまま流されちゃあ。何とか話の流れを切らないと。
「に、兄さん気持ちはありがたいのよ?だけどね・・・」
「わかってる!明日香は恥ずかしがり屋だから素直になれないんだね!」
「ち、違・・・」
「寮だと見つかるかも知れないから、放課後の保健室や空き教室を使うといいよ。」
「あ、あのね・・・」
「それと十代君、義兄からのお願いだ。このカメラで明日香との愛の記録を・・・」
「・・・い、いい加減にしなさぁい!」

「まったく兄さんは、元気になったと思ったら・・・はぁ。」
1時間後、ようやく開放されて廊下で盛大な溜め息をつく。
しかも腕の中にあるのは、あの恥ずかしい・・・ブラックマジシャンガールの衣装。
あの後兄さんは「明日香がこれを受け取ってくれるまでこの部屋を出さない!」と言って部屋の入り口を塞ぐ始末。
前向きに検討する(なんか政治家みたいな言い方だ)って言い逃れて、その場を凌いだ。
とはいえこんな服を私が着たって似合うはずが無い。
「男キャラより男らしい」だとか「唯一凛々しいデュエルしてる」と某匿名掲示板で散々に
言われているような私にこんなものを着ろだなんて嫌がらせ以外の何物でもない!
・・・いけない、興奮して自分でも意味のわからないことを言っている・・・。
と、とにかく私みたいな可愛げの無い女が着たって似合うはずがない。
でも・・・私だって女の子だ(何か文句ある?)。可愛いと言われたくない筈がない。
・・・これを着てみれば少しは・・・でも・・・。
そ、そうよ、別に誰かに見せなくたって、着てみれば何かヒントが手に入るかも知れない。
でも寮にこの衣装を持ち込むなんて論外だし、あとは・・・兄さんが言っていたあそこなら・・・。
何だか兄さんの思い通りに動いているようなのが気になるけれど、他に良い場所が思いつかない。
・・・大丈夫、返答を渋った私がすぐに行動を起こすなんて兄さんも想像がつかないはずだ。
もう授業が終了してだいぶ経つし、生徒もほとんど居ない。今がチャンスだ。
誰も居ない放課後の廊下を、それでも周りを警戒しながら慎重に走り出す。
目的地は・・・無人の筈の保健室だ。

保健室のドアをそっと開けて、中に滑り込む。ここまでは運良く誰にも見つかってない。
保健室の中も思ったとおり無人だ。しんとした空気が漂っている。
正体がセブンスターズのメンバーだった保険医のミーネ先生の代わりがまだ入って来ていないこと、
そして兄さんが元気になったことで、保健室は今は開店休業状態なのだ。
デュエルが第一のアカデミアでは部活で怪我をすることも稀だから、誰かが来る心配も無い。
それにここには身体検査用の大きな姿見がある、まさに秘密の試着にもってこいの場所になっている。
それでも警戒して隠しカメラが無いか怪しいところを調べてみる。
兄さんならやりかねないが、隠しカメラは見つからなかった。取り敢えず安心。
早速なぜかサイズがピッタリのこの衣装を着てみる。
姿見で今の自分を見て・・・その場にくず折れたくなる。
この可愛くもなんともない浮きまくってる女は一体誰!?
・・・くじけそうになりながらも何とか可愛らしくあるための努力を考える。
まずはスマイル、そして可愛らしいポーズ。誰も見ていないんだから羞恥心は捨てるように心がける。
誰も見ていないと考えると、少しだけ気が楽になってきた。同時に気分がノってくる。
一回転してポーズを決めて・・・
「ブラック・・・バーニング!!」
「と、とりあえずほとぼりが冷めるまでここに隠れて・・・」
「え・・・?」
「!!・・・え?あ、明日香?」
十代は腰が引けたまま、私は恥ずかしいポーズを決めたまま固まった。
「・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
闇のデュエルに匹敵するほど重く暗い空気が場を支配する・・・。

「・・・お、俺は急ぐから。じゃっ!!」
きびすを返して部屋を出ようとする十代。逃がすわけにはいかない!回り込んで出口を塞ぐ。
「待ってお願い!このことは誰にも言わないで!お願い忘れて!!」
「と、通してくれ!早く逃げないとエビフライの恨みが!」
「お願いだから!忘れて!何も見なかったって言って!!」
「通してくれったら!頼むから!!」
「お願い!お願い!お願い!!」
こんなことが皆に知られたら破滅だ、とにかく十代に必死に頼み込む。
十代も何か言っているような気がするが分からない、それどころじゃない。
「通してくれえぇぇぇっ!!・・・来る!復讐に燃える奴らが!」
言うなり回れ右で保健室の奥に向かう十代、一体どうしたのかと思ったけど、
私にも聞こえてきた。複数の足跡、しかもこっちに向かってきてる!
わ、私もどこかに隠れないと・・・隠れることのできそうな場所は・・・。
とっさにベッドの下に滑り込むと・・・なんであなたもここにいるのよ十代!!
「考える事が同じレベルだなんて、はぁ・・・。」
ベッドの下に2人入るのは少しキツイ、でも出ることができない。なぜなら・・・
「ここか十代!!よくもこの万丈目サンダーのエビフライを!」
「僕のもっス!元の形にして今すぐ返すっスよ!!」
ドアを蹴破る勢いで開けて保健室に入ってきたのは憤怒の形相の万丈目君に丸藤君、
それに巻き込まれた感じの前田君。なんとなく理解できた。
「要するに彼らの分を食べちゃったのね・・・さっさと出て行って謝ってきなさい。」
「じょ、冗談じゃないぜ!今出てったら殺されちまう!」
冗談じゃないのはこっちの方だ。十代は見つかっても殺されるだけで(?)済むが、私は見つかったら破滅だ。
「とにかく虱潰しに探すっス!まずはこの部屋から!」
どうしよう・・・間違いなく見つかっちゃう・・・。

「待ちたまえ、丸藤ワトソン君!そんなことをしても時間の無駄だ!」
いきなり大声を上げたのは万条目君。・・・ワトソン?
「ヤツは非常に狡猾な男だ、こんなに分かりやすいところに隠れることは無い!」
「また始まった・・・って誰がワトソンっスか!?」
「聞きたまえ、ヤツは・・・遊城十代はこの校舎を既に抜け出しているに違いない!」
「な、なんだっ(ry」
「そして安全なところで我々をあざ笑っているのだ!名探偵万丈目サンダーの灰色の頭脳がそう言っている!」
「さすが!迷探偵万丈目サンダーの灰色(に腐った)頭脳!」
「さぁ!ヤツを追い詰めるのだ!行くぞ諸君!!」
そのままの勢いで走り去ってく3人。ありがとう・・・万条目君。
「ふぅ・・・助かった・・・って、な、何!?ちょっと十代!?」
ベッドの下から這い出そうとした私の上に十代がのしかかってくる。
「さっきはパニクってて気付かなかったけど、面白い格好してるんだな。」
「こ、こら!離しなさい!離しなさいってば!!」
「良いのかな〜?みんなにバラシちゃうぜ?明日香がBMGの格好でポーズ決めてたって。」
「くっ・・・」
「・・・そんなに嫌なのか?俺とするのって・・・」
「そ、それは・・・そうじゃないわ。そうじゃないくて・・・」
「じゃ良いんだな!それじゃ早速・・・」
そう言って十代は衣装の股間の布をずらしていきなり挿入してきた。
「う、嘘・・・いや・・・あああああっ!!」
「うわっ!入っちまった!!」
「ひどい・・・こんな・・・いきなり・・・」
「わ、悪い・・・ちょっとからかってみようと思っただけだったんだ。・・・でも何でこんな濡れてるんだ?」
「────っ!し、知らない!このバカぁ!!」
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