まずバーストお姉ちゃんに聞いてみた。
「え? そうねぇ。昔はほとんど毎日だったかな。
うん、基本あいつがリードしてた。でも結局最後はアタシが動かなきゃいけないのよね。
イヤってわけじゃないんだけど、いつもそれだと飽きるじゃない?
だから一時期アタシが主導権を握ってみようとしてた頃もあって。
前より良くなったとアタシは思うんだけど、なんでか回数は減っちゃったなぁ」
ファイアお姉ちゃんに聞いてみた。
「あらエクス。あなたもそんな年頃になったのね。
私はバーストほど経験豊富じゃないから参考になるかはわからないけど……
ええ、とても体が熱くなるわ。内側からどんどん熱が沸いてきて、胸の辺りから溢れそうになるの。
一回だけじゃ治まらなくて、連続して出したこともあったわね」
ブルーメお姉ちゃんに聞いてみた。
「ふぇっ!? いいいいいきなり何を言い出すのよエクスちゃん!
そ、そりゃあ私だってはじめてはエクスちゃんくらいの時だったし、参考にしたいっていうなら……(ゴニョゴニョ)。
ええっと、こう、ずしーんと、お腹が下から揺さぶられる感じだったかな。もう立ってらんないくらい。
……あの人には本命さんがいるのが分かってたから、それはちょっとさみしかったけど」
ユベルおね……おに…………間をとって、ユベルおぬーちゃんにも聞いてみた。
「あははは。そうだねぇ。まさか、という気分だったかな。
ボクはこんな体だから、ちゃんとできるかどうか不安だったけれど、何事もやってみるものだね。
動く度に体中に活力がみなぎってきてね? ちょっと他では味わえない感覚だよ。
しかも彼と来たら、やっぱり慣れててね。それに相手が大勢であればあるほど調子が良くなるんだよ。
最後は六人相手に決めちゃってたからねぇ………………まあ、ボクは放置プレイだったけれど」
そして四人とも、最後は口をそろえてこう言った。
「「「「やっぱりいいもの(だ)よ。『融合』って」」」」
一通りインタビューを終えて、少女は胸のときめきを抑えきれずにいた。
親戚のお姉ちゃんとお揃いの帽子。オレンジ色の子供用ローブ。いつも持ってるステッキは、今日はマイクに変わっている。
彼女の名はカードエクスクルーダー。通称エクス。
『融合』を夢見るお年頃。
はじめてのゆうごう 〜新しい私はエクストラデッキの中に〜
「という訳なのです!」
ばん、という音が声と共に部屋に響いた。
だが彼は彼女の話よりもジュースに注意がいっていて、ちゃぶ台が叩かれたことでコップが倒れないかがとにかく心配で、ぶっちゃけるとあんまり聞いていなかった。
というか、途中から聞いていられなくなったというべきか。だからつい適当な返事をしてしまった。
「えーと、何が?」
「むー!!」
(うわしまった!?)
瞬時にほっぺたをむくれさせてしまったカードエクスクルーダーを見て、彼は己の失策を悟ったが、時すでに遅し。
なんとかフォローしようとするよりも早く、エクスの手がちゃぶ台の上に置かれたマイクを引っ掴み剣のように振りかざした。
「だから! 融合なのです! ミっくんはエクスのお話を聞いてなかったのですかぁ!!」
「聞いてなかったというか……恥ずかしくて聞いてられなかったというか……」
「言い訳なんて男の子のすることじゃありません! エクスはミっくんをそんな風に育てた覚えはありませんよぉ!」
あーそうか今日のおままごとはエクスがお母さんで僕が子供って設定だったっけ、とミっくんことミラクル・フリッパーはおざなりに思い出していた。
一流のセパタクロー選手を目指す息子と、おさわりバーでパートをして家計を支える母が織り成す愛憎劇。ユベルに脚本を書いてもらうのはもうやめようと思う。
わーわーと騒ぎ出したエクスをなだめながら、フリッパーはこうなってしまった原因を思い出す。
そもそも、おままごとの途中でエクスがマイクとレコーダーを持ち出してきたのが始まりで……
ここはデュエルモンスターズ界にある、遊城十代のデッキハウスだ。
デッキハウスとはその名の通り、デュエリストによってデッキにまとめられたカード達が、共同生活を行っている場所のことである。
マスターであるデュエリストがデュエルを行う時以外の時間、カードに宿る精霊達はここで英気を養うのだ。
この世界にはデュエリストの数だけデッキハウスが存在し、その外観はそれぞれのデッキの特性が反映されたものになっている。
たとえばブラックマジシャンデッキのデッキハウスは学校みたいだし、ハーピィデッキならツリーハウスだ。
どこも二十人前後のモンスター達が暮らしているだけあってかなりの大きさを持っているが、マジエク1キルデッキのデッキハウスは老魔術師が一人暮らししていることもあるので少し寂しい。
さて遊城十代のデッキハウスはと言うと、簡単に説明するならば見た目はブ○ース=ウェ○ンの邸宅。外は昼間なのに、部屋の中から窓の外を見ると月夜だったりする不思議な建物だ。
何年か前にネオス達がホームステイに来てからは、科学○備隊っぽい部屋も出来て若干混沌としている。
そんな中でも、ファンシーな小物やぬいぐるみで埋め尽くされたこの部屋は特に浮いているかもしれない。照明も壁紙も明るく、まるでここだけキュアバーンデッキのようだ。
それもそのはず。ここはカードエクスクルーダーのために用意された部屋なのだ。フェザー、クレイ、ヒート、バブルがここの半分の広さの部屋で雑魚寝していることを考えると、すさまじい贔屓っぷりである。
ちなみにフリッパーと同室なのはヒーロー・キッズ。いつもは彼らもエクスのおままごとに付き合わされているのだが、今日はたまたまフレンドッグの散歩に行っていて不在だった。なので、フリッパーが一人でこのわがまま魔女の面倒を見る羽目になっている。
初めのうちは脚本どおりに話を進めていた。しかしエクスは何を思ったか、突然先の話をし始めたのである。
なんだか表現方法に偏りのある融合体験談を。
エクスは平気……というか理解していないだけなのだろうが、兄貴分が多いせいでいくらかはそちらの知識のあるフリッパーにはきつい話だった。
「ミっくん」
「はい!」
お怒りモード継続中のエクスに、フリッパーは背筋を伸ばして答える。戦闘破壊は平気だが、除外されるのは怖い。
エクスは小さな眉間に精一杯しわを寄せて、
「ミっくんはわかってません。これはミっくんのためにもなることなのです」
「……そうなの?」
思わず首をひねってしまう。
「そうです! 私もミっくんも、マスターは一度しかデュエルで使ってくれていません。なのにバーストお姉ちゃんやフェザーお兄ちゃんは、一度のデュエルで何度も召喚されることもあります」
「うん。ネオスさんは特にすごいよね」
もし死んだら過労死認定が降りる。絶対。
「この違いはなぜか! その答えが融合なのです!」
再びばんばんとちゃぶ台を叩くエクス。余談だがこのちゃぶ台はままごとの小道具には必須だろうと、フォレストおじさんが身を削ってこしらえてくれたものである。
エクスはヒートハートでも使われたみたいに声に熱気をこめて続ける。
「マスターのデュエルで活躍してる人たちは、みーんな融合してるのです! つまり、融合さえできればエクスたちだって大活躍できるはずなのです!」
(……つまりは出番がないのが不満なのか)
フリッパーは彼女に気づかれないようこっそりため息をついた。OPにワンカット出演し、特典カードにもなり、カードショップでウン千円で取引されていてもまだ不服らしいこのロリマジは。
ノーマル止まりの自分からしてみれば贅沢もいいとこである。
「エクス。気持ちはわかるけど、僕らには無理だよ。だってHEROじゃないじゃん」
「そんなことないです。キッズくんたちだってバブルお兄ちゃんと融合できます!」
「いや、それ没になった設定だから」
「ユベルおぬーちゃんだってHEROじゃないです。レインボー・ドラゴンさんも、ガイア・プレートさんも! だからエクスたちだってできないはずないのです!」
「その人たちは別格でしょ……しかもガイア・プレートさんの時は…………あ」
かんしゃく球が破裂しそうなエクスだが、フリッパーはここで一つ思いついたことがあった。
地球巨人ガイア・プレート。彼がHEROと融合した時の条件は、確か……
「そうか、できるかも」
「ふぇ?」
「種族を変更すればいいんだよ! 悪魔族か岩石族になれば、ダーク・ガイアやマリシャス・デビルになれるよ、僕らでも」
「かわいくないからやーです」
「……今なら僕、超伝導恐竜でも倒せる気がするよ……」
ぎゅっと拳を握り締めて危険な衝動をこらえるフリッパー。ちなみに効果をうまく使えば普通に倒せる。
「ミっくん。他にアイデアはないのですか?」
変わらず自分のペースで話を進めるチビマジガール。いいかげん愛想をつかしてもよさそうなのに、なぜか彼女には甘くしてしまうフリッパーだった。
「他にって……うーん、専用融合モンスターがいない以上コンボでどうにかするしかなんだから……相手の場にサイバー・ドラゴンがいる状態で機械族に変更して、フォートレスになる、とか?」
「! それです!」
「え? ありなの?」
「一号機エクス! 用意はいいですか!?」
『二号機フリッパー! いつでもいいよ!』
『三号機ピケル! ピケルにおまかせ!』
『四号機クラン! 託しますわ、貴女に!』
『五号機ウィン……あれ? なんで私こんな所にいるのーーー!?』
それぞれの専用飛行マシンに乗り込んだ五人の魔法使いたちが、一体のサイバー・ドラゴンを取り囲んでいく。
その軌跡は鋼色の五芒星となり、一瞬の閃光と共に機龍を捕獲した。
――ガオオオォォォンッ
「今です!」
エクスは叫ぶと同時、まるで自分の手足のようにマシンを操作し、サイバー・ドラゴンの頭部にドッキングさせた。
二号機から五号機も、順に長い胴体に取りついていく。
各マシンとサイバー・ドラゴンの動力が直結し、全てのコントロールがエクスの機体に集まった。
「強制融合、プログラム、ドラァァァィヴゥ! ですぅ!」
掛け声とおもに振り下ろしたステッキが操縦桿中央のスイッチを防護ガラスごと砕き割る。
正面のモニタに写る『Chimeratech Fortress Dragon,START UP』の文字。
直後、捕獲されたサイバー・ドラゴンの体が振動した。
装甲の継ぎ目から、赤、青、白、黒、緑の五色の光があふれ出す。それらはドラゴンの体を包み隠すかのように拡大していく。
さなぎが成虫になるように、五色のオーロラが取り払われたとき、そこにいたのは数倍にも巨大になったまったく異なる姿の竜だった。
大部屋に各マシンのコクピット部位のみが集合する。中央に座るエクスは、高らかに名乗りを上げた。
「魔女と機械の二つの道が、ねじって交わるデュエル道!
昨日の敵で運命(さだめ)を砕く! 明日への道をこの手で掴む!
宿命融合! キメラテック・フォートレス・ドラゴン!!」
ボディ側面から五つの首が飛び出し、六つ首竜となったフォートレスが咆哮する。
「エクスたちを、誰だと思ってやがりますかぁ!!」
〜〜以上、エクスの妄想
「〜〜〜〜っ! これです! エクスが望んでいたのはこういう展開なのです! アメコミもウルト○マンももー古いのです! 時代は巨大ロボットなのですー!」
マスターに聞かれたらしばらくお留守番確定の暴言を叫びだすエクス。自分だけ「魔女」ではないし、知らない人がいるし、デッキコンセプトも滅茶苦茶だし、そもそも現環境でその状況を作るのは難しすぎるし、つっこみどころが多すぎた。
(これは……まずいかも)
遅まきながらそう気づいたフリッパーは、エクスが妄想から帰ってくる前に部屋からの脱出を試みる。
何かとエクスには甘いフリッパーだが、道づれでデッキから抜かれるのは勘弁だった。
がしっ。
が、しかし。抜き足差し足で扉に向かっていた彼の袖をもの凄い勢いと力で掴む手があった。
おそるおそる振り返る。
「ミっくん」
そこにはこのデッキハウスのアイドル、傍若無人のロリマジガールが、すんごい笑顔で迫ってきていた。
目は口ほどに物を言う。
『もちろんミっくんも賛成してくれるですね?』
……その後、おままごとは家中をフィールドにした壮絶な鬼ごっこへと移行した。
逃げるフリッパーに追うエクス。ちびっこ達の激闘は融合状態で出稼ぎにいっていたワイルドジャギーマンにまとめてしばき倒されるまで続いたという。
おしまい
この後、放蕩息子のヘル・ゲイナーが1か月ぶりに帰ってきて、エクスを幻惑の巻物で緊縛。
水属性に変更して強制的にZEROに融合しようとするが、すんでの所でヒーローマスクをかぶったフリッパーが現れ、
マスターからちょっぱってきた超融合でエクスを取り返し絶対零度でお仕置きする、という話を考えてたのだけど、エロ要素を入れる隙がなさそうなんで没にしてました。
ちょびっとでも笑ってもらえたなら幸いです。
「え? そうねぇ。昔はほとんど毎日だったかな。
うん、基本あいつがリードしてた。でも結局最後はアタシが動かなきゃいけないのよね。
イヤってわけじゃないんだけど、いつもそれだと飽きるじゃない?
だから一時期アタシが主導権を握ってみようとしてた頃もあって。
前より良くなったとアタシは思うんだけど、なんでか回数は減っちゃったなぁ」
ファイアお姉ちゃんに聞いてみた。
「あらエクス。あなたもそんな年頃になったのね。
私はバーストほど経験豊富じゃないから参考になるかはわからないけど……
ええ、とても体が熱くなるわ。内側からどんどん熱が沸いてきて、胸の辺りから溢れそうになるの。
一回だけじゃ治まらなくて、連続して出したこともあったわね」
ブルーメお姉ちゃんに聞いてみた。
「ふぇっ!? いいいいいきなり何を言い出すのよエクスちゃん!
そ、そりゃあ私だってはじめてはエクスちゃんくらいの時だったし、参考にしたいっていうなら……(ゴニョゴニョ)。
ええっと、こう、ずしーんと、お腹が下から揺さぶられる感じだったかな。もう立ってらんないくらい。
……あの人には本命さんがいるのが分かってたから、それはちょっとさみしかったけど」
ユベルおね……おに…………間をとって、ユベルおぬーちゃんにも聞いてみた。
「あははは。そうだねぇ。まさか、という気分だったかな。
ボクはこんな体だから、ちゃんとできるかどうか不安だったけれど、何事もやってみるものだね。
動く度に体中に活力がみなぎってきてね? ちょっと他では味わえない感覚だよ。
しかも彼と来たら、やっぱり慣れててね。それに相手が大勢であればあるほど調子が良くなるんだよ。
最後は六人相手に決めちゃってたからねぇ………………まあ、ボクは放置プレイだったけれど」
そして四人とも、最後は口をそろえてこう言った。
「「「「やっぱりいいもの(だ)よ。『融合』って」」」」
一通りインタビューを終えて、少女は胸のときめきを抑えきれずにいた。
親戚のお姉ちゃんとお揃いの帽子。オレンジ色の子供用ローブ。いつも持ってるステッキは、今日はマイクに変わっている。
彼女の名はカードエクスクルーダー。通称エクス。
『融合』を夢見るお年頃。
はじめてのゆうごう 〜新しい私はエクストラデッキの中に〜
「という訳なのです!」
ばん、という音が声と共に部屋に響いた。
だが彼は彼女の話よりもジュースに注意がいっていて、ちゃぶ台が叩かれたことでコップが倒れないかがとにかく心配で、ぶっちゃけるとあんまり聞いていなかった。
というか、途中から聞いていられなくなったというべきか。だからつい適当な返事をしてしまった。
「えーと、何が?」
「むー!!」
(うわしまった!?)
瞬時にほっぺたをむくれさせてしまったカードエクスクルーダーを見て、彼は己の失策を悟ったが、時すでに遅し。
なんとかフォローしようとするよりも早く、エクスの手がちゃぶ台の上に置かれたマイクを引っ掴み剣のように振りかざした。
「だから! 融合なのです! ミっくんはエクスのお話を聞いてなかったのですかぁ!!」
「聞いてなかったというか……恥ずかしくて聞いてられなかったというか……」
「言い訳なんて男の子のすることじゃありません! エクスはミっくんをそんな風に育てた覚えはありませんよぉ!」
あーそうか今日のおままごとはエクスがお母さんで僕が子供って設定だったっけ、とミっくんことミラクル・フリッパーはおざなりに思い出していた。
一流のセパタクロー選手を目指す息子と、おさわりバーでパートをして家計を支える母が織り成す愛憎劇。ユベルに脚本を書いてもらうのはもうやめようと思う。
わーわーと騒ぎ出したエクスをなだめながら、フリッパーはこうなってしまった原因を思い出す。
そもそも、おままごとの途中でエクスがマイクとレコーダーを持ち出してきたのが始まりで……
ここはデュエルモンスターズ界にある、遊城十代のデッキハウスだ。
デッキハウスとはその名の通り、デュエリストによってデッキにまとめられたカード達が、共同生活を行っている場所のことである。
マスターであるデュエリストがデュエルを行う時以外の時間、カードに宿る精霊達はここで英気を養うのだ。
この世界にはデュエリストの数だけデッキハウスが存在し、その外観はそれぞれのデッキの特性が反映されたものになっている。
たとえばブラックマジシャンデッキのデッキハウスは学校みたいだし、ハーピィデッキならツリーハウスだ。
どこも二十人前後のモンスター達が暮らしているだけあってかなりの大きさを持っているが、マジエク1キルデッキのデッキハウスは老魔術師が一人暮らししていることもあるので少し寂しい。
さて遊城十代のデッキハウスはと言うと、簡単に説明するならば見た目はブ○ース=ウェ○ンの邸宅。外は昼間なのに、部屋の中から窓の外を見ると月夜だったりする不思議な建物だ。
何年か前にネオス達がホームステイに来てからは、科学○備隊っぽい部屋も出来て若干混沌としている。
そんな中でも、ファンシーな小物やぬいぐるみで埋め尽くされたこの部屋は特に浮いているかもしれない。照明も壁紙も明るく、まるでここだけキュアバーンデッキのようだ。
それもそのはず。ここはカードエクスクルーダーのために用意された部屋なのだ。フェザー、クレイ、ヒート、バブルがここの半分の広さの部屋で雑魚寝していることを考えると、すさまじい贔屓っぷりである。
ちなみにフリッパーと同室なのはヒーロー・キッズ。いつもは彼らもエクスのおままごとに付き合わされているのだが、今日はたまたまフレンドッグの散歩に行っていて不在だった。なので、フリッパーが一人でこのわがまま魔女の面倒を見る羽目になっている。
初めのうちは脚本どおりに話を進めていた。しかしエクスは何を思ったか、突然先の話をし始めたのである。
なんだか表現方法に偏りのある融合体験談を。
エクスは平気……というか理解していないだけなのだろうが、兄貴分が多いせいでいくらかはそちらの知識のあるフリッパーにはきつい話だった。
「ミっくん」
「はい!」
お怒りモード継続中のエクスに、フリッパーは背筋を伸ばして答える。戦闘破壊は平気だが、除外されるのは怖い。
エクスは小さな眉間に精一杯しわを寄せて、
「ミっくんはわかってません。これはミっくんのためにもなることなのです」
「……そうなの?」
思わず首をひねってしまう。
「そうです! 私もミっくんも、マスターは一度しかデュエルで使ってくれていません。なのにバーストお姉ちゃんやフェザーお兄ちゃんは、一度のデュエルで何度も召喚されることもあります」
「うん。ネオスさんは特にすごいよね」
もし死んだら過労死認定が降りる。絶対。
「この違いはなぜか! その答えが融合なのです!」
再びばんばんとちゃぶ台を叩くエクス。余談だがこのちゃぶ台はままごとの小道具には必須だろうと、フォレストおじさんが身を削ってこしらえてくれたものである。
エクスはヒートハートでも使われたみたいに声に熱気をこめて続ける。
「マスターのデュエルで活躍してる人たちは、みーんな融合してるのです! つまり、融合さえできればエクスたちだって大活躍できるはずなのです!」
(……つまりは出番がないのが不満なのか)
フリッパーは彼女に気づかれないようこっそりため息をついた。OPにワンカット出演し、特典カードにもなり、カードショップでウン千円で取引されていてもまだ不服らしいこのロリマジは。
ノーマル止まりの自分からしてみれば贅沢もいいとこである。
「エクス。気持ちはわかるけど、僕らには無理だよ。だってHEROじゃないじゃん」
「そんなことないです。キッズくんたちだってバブルお兄ちゃんと融合できます!」
「いや、それ没になった設定だから」
「ユベルおぬーちゃんだってHEROじゃないです。レインボー・ドラゴンさんも、ガイア・プレートさんも! だからエクスたちだってできないはずないのです!」
「その人たちは別格でしょ……しかもガイア・プレートさんの時は…………あ」
かんしゃく球が破裂しそうなエクスだが、フリッパーはここで一つ思いついたことがあった。
地球巨人ガイア・プレート。彼がHEROと融合した時の条件は、確か……
「そうか、できるかも」
「ふぇ?」
「種族を変更すればいいんだよ! 悪魔族か岩石族になれば、ダーク・ガイアやマリシャス・デビルになれるよ、僕らでも」
「かわいくないからやーです」
「……今なら僕、超伝導恐竜でも倒せる気がするよ……」
ぎゅっと拳を握り締めて危険な衝動をこらえるフリッパー。ちなみに効果をうまく使えば普通に倒せる。
「ミっくん。他にアイデアはないのですか?」
変わらず自分のペースで話を進めるチビマジガール。いいかげん愛想をつかしてもよさそうなのに、なぜか彼女には甘くしてしまうフリッパーだった。
「他にって……うーん、専用融合モンスターがいない以上コンボでどうにかするしかなんだから……相手の場にサイバー・ドラゴンがいる状態で機械族に変更して、フォートレスになる、とか?」
「! それです!」
「え? ありなの?」
「一号機エクス! 用意はいいですか!?」
『二号機フリッパー! いつでもいいよ!』
『三号機ピケル! ピケルにおまかせ!』
『四号機クラン! 託しますわ、貴女に!』
『五号機ウィン……あれ? なんで私こんな所にいるのーーー!?』
それぞれの専用飛行マシンに乗り込んだ五人の魔法使いたちが、一体のサイバー・ドラゴンを取り囲んでいく。
その軌跡は鋼色の五芒星となり、一瞬の閃光と共に機龍を捕獲した。
――ガオオオォォォンッ
「今です!」
エクスは叫ぶと同時、まるで自分の手足のようにマシンを操作し、サイバー・ドラゴンの頭部にドッキングさせた。
二号機から五号機も、順に長い胴体に取りついていく。
各マシンとサイバー・ドラゴンの動力が直結し、全てのコントロールがエクスの機体に集まった。
「強制融合、プログラム、ドラァァァィヴゥ! ですぅ!」
掛け声とおもに振り下ろしたステッキが操縦桿中央のスイッチを防護ガラスごと砕き割る。
正面のモニタに写る『Chimeratech Fortress Dragon,START UP』の文字。
直後、捕獲されたサイバー・ドラゴンの体が振動した。
装甲の継ぎ目から、赤、青、白、黒、緑の五色の光があふれ出す。それらはドラゴンの体を包み隠すかのように拡大していく。
さなぎが成虫になるように、五色のオーロラが取り払われたとき、そこにいたのは数倍にも巨大になったまったく異なる姿の竜だった。
大部屋に各マシンのコクピット部位のみが集合する。中央に座るエクスは、高らかに名乗りを上げた。
「魔女と機械の二つの道が、ねじって交わるデュエル道!
昨日の敵で運命(さだめ)を砕く! 明日への道をこの手で掴む!
宿命融合! キメラテック・フォートレス・ドラゴン!!」
ボディ側面から五つの首が飛び出し、六つ首竜となったフォートレスが咆哮する。
「エクスたちを、誰だと思ってやがりますかぁ!!」
〜〜以上、エクスの妄想
「〜〜〜〜っ! これです! エクスが望んでいたのはこういう展開なのです! アメコミもウルト○マンももー古いのです! 時代は巨大ロボットなのですー!」
マスターに聞かれたらしばらくお留守番確定の暴言を叫びだすエクス。自分だけ「魔女」ではないし、知らない人がいるし、デッキコンセプトも滅茶苦茶だし、そもそも現環境でその状況を作るのは難しすぎるし、つっこみどころが多すぎた。
(これは……まずいかも)
遅まきながらそう気づいたフリッパーは、エクスが妄想から帰ってくる前に部屋からの脱出を試みる。
何かとエクスには甘いフリッパーだが、道づれでデッキから抜かれるのは勘弁だった。
がしっ。
が、しかし。抜き足差し足で扉に向かっていた彼の袖をもの凄い勢いと力で掴む手があった。
おそるおそる振り返る。
「ミっくん」
そこにはこのデッキハウスのアイドル、傍若無人のロリマジガールが、すんごい笑顔で迫ってきていた。
目は口ほどに物を言う。
『もちろんミっくんも賛成してくれるですね?』
……その後、おままごとは家中をフィールドにした壮絶な鬼ごっこへと移行した。
逃げるフリッパーに追うエクス。ちびっこ達の激闘は融合状態で出稼ぎにいっていたワイルドジャギーマンにまとめてしばき倒されるまで続いたという。
おしまい
この後、放蕩息子のヘル・ゲイナーが1か月ぶりに帰ってきて、エクスを幻惑の巻物で緊縛。
水属性に変更して強制的にZEROに融合しようとするが、すんでの所でヒーローマスクをかぶったフリッパーが現れ、
マスターからちょっぱってきた超融合でエクスを取り返し絶対零度でお仕置きする、という話を考えてたのだけど、エロ要素を入れる隙がなさそうなんで没にしてました。
ちょびっとでも笑ってもらえたなら幸いです。
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