帝国の竜神様21
エルフ達の街は世界樹を中心に広がっていた。
この鏡の川にある竜宮から世界樹までが一番の集落だという。
皆、集落の物陰から興味津々で零式水偵を眺めている。
まぁ、こちらもエルフをじろじろ見ているからお互い様という所か。
彼女達が身に着けている服は貫頭衣なのだろうが、紐を使い腰で縛るから胸が強調されることこの上ない。
というか、エルフに貧乳という言葉は存在しないと見た。
(何をじろじろ見ているのじゃ?)
と、撫子が突っ込むが無視。
男には胸とは浪漫なのだ。
(何を訳の分からない事を言うておる。わらわの胸を散々見ているではないか)
更に無視しつつ、今度はエルフの女兵士の方に。
皮の鎧をつけ皆、弓を手にしている。
腰には短刀を差しており盾は持っているように見えない。
銃器で襲われたらあっという間だろうな。
「イッソスで見た空中騎士ですら鉄の防具を用意しているのだが、人間達が来た時はどうやって撃退するのだろうな?」
「その為の魔法ですわ」
俺の口に出した問いにメイヴが答えた。
「魔法とはこの世界に直結した理ですから、そこの優劣でほぼ勝負がついてしまいます。
魔力が強い分、この森の中でなら簡単には負けないでしょう。ただ……」
メイヴは言いにくそうに口を閉じた。
その先は人間である俺ならば言わなくても分かっている。
人間の強欲さと組織的行動は絶対数で少ないエルフを圧倒するし、事実大崩壊という惨事がなければこの森も虚無の平原みたいに刈り取られていたのだろう。
ましてや、これからエルフに起こるであろう災難は間違いなく俺達が引き起こした事だ。
世界樹の巨大な幹につくと、上空に上る三人ぐらいが入れる籠が置いてあった。
グウィネヴィアはこの世界樹の上に館を構えているという。
幹の中にも繰り抜いた道があり、籠が苦手な人などはそこから上がるらしい。
しかし、1000メートルを上るというのはかなり時間がかかる。
ゆるゆると、眼下に広がる森林を眺めながら10数分後にやっと世界樹の上に到着。
枝葉をうまく使って足場を作ったツリーハウスがそこにはあちこちにあった。
「元々はこの世界樹の中だけエルフの集落があったのですが、追われたエルフやダークエルフがこの森に住み着いて時間と共にエルフも増えてきて下に里を作り、また更に森のあちこちに里ができていったのです」
ふと疑問に思ったので言って見た。
「メイヴ。素朴な疑問なのだが、女しかいないのにどうやって増えるんだ?」
「どちらかが女のまま男性のものを生やす事が一つと、私達は動物とも交わって子を成す事ができるのです。
森の息吹に動物も欠かせないので彼ら動物との交尾と養育も私達の大事な営みなのですわ」
ストレートに強烈な事を言ってのけるメイヴ。
「という事は、森の動物が交尾をしたら遺伝上まったく違うエルフが鹿や熊の夫婦から生まれてくるという可能性があるという事か?」
「はい。そういうエルフを見つけて育てるのもエルフの仕事なのですわ」
なお、そういうエルフが成長すると獣化して親の獣に戻るか、育ったエルフの集落を離れて新たな集落を起こすのが常らしい。
グウィネヴィアの館は、この広大な森林地帯を治める者にしては小さすぎた。
姉が妾になった伯爵の家の方が多分大きい。
「どうぞおかけになってください」
部屋の中央に獣の絨毯を敷き詰めた部屋に通され、当たり前のように撫子が中央に座る。
その左右にメイヴとグウィネヴィア、客人の位置に俺。
じゃれあって忘れそうになるが、撫子こそこのエルフ達を使役する竜なんだよなぁ。
「で、だ。
わらわは博之のいる世界に世話になるので、こっちにとどまり続けることができぬ」
「はい」
「承知いたしました」
即決かよ。
まぁ、こいつらテレパスが使えるから細かい所はもう詰めていたのかもしれないな。
「さて、ここに来たのはこの世界と博之たちの世界とを繋げる穴を作ることじゃ。
この穴があれば双方の世界のマナが往来し、わらわが繋がる龍脈をこの世界樹に繋げ、人や物の往来が可能になろう。
その儀式をせねばならぬ」
これこそ、この世界樹に来た理由だったりする。
異世界への往還は単体の撫子すら扱えないほどの魔力を必要とする。
異世界へ魔力で穴をあけ、そこから撫子の契約した日本の龍脈をこちらに引き寄せて霊験らたかな世界樹に宿らせる。
この作業で撫子は地球と異世界双方で無尽蔵の魔力が行使でき、異世界往還の道が作られる。
なお、日本ではメイヴかその母祖たるダーナが撫子の龍脈魔力を代行し、異世界ではグウィネヴィアがその役を司る。
グウィネヴィアが俺達の前に卵を持ってくる。
その卵は人の頭ほどある巨大な物で、虹色に淡く輝いている。
俺はつい最近、これを散々夜から朝にかけて見たことがある。
撫子を抱いた後に彼女が生む卵と同じなのだ。
何故だか知らないが背中がとても寒い。
「かつて、撫子様が古代魔法文明時にお作りになられた魔竜玉ですわ。
この中に込められた魔力と撫子様が持つ魔力を足して博之様の世界に穴を開けます」
やっぱりか。
零式水偵の中にあるグウィネヴィアへの品にそれが数個あったりする。
「前々から聞きたかったのだが、撫子、いや竜というのは魔法にとって一体どういうものなんだ?」
グウィネヴィアとメイヴの顔がこわばるがそれを撫子が手で制した。
「よい。
わらわは博之のものなのでな。
そろそろ話してもいいであろう」
今までで一番凛々しく貫くような瞳で俺を見つめた撫子はゆっくりと口を開いた。
「この世界は博之たちの言う魔法という概念で構成されておる。
この魔法というのは更にオーラとマナという概念に分かれるのじゃ。
オーラというのはその存在そのものが持つ本質的な力、
マナというのは、世界構成における変換情報とかつてこの世界の人間は定義しておった。
ちなみに、わらわが契約した竜脈というのは『星の命』そのものじゃ。
それゆえ、種の頂点に立つ絶対種としてわらわ達竜は存在しているという話らしいの」
まじめな顔で聞く俺だが、専門用語が多すぎでよく分からない。
「すまん。撫子。俺にもわかる言葉でしゃべってくれ」
「とはいわれてものぉ……
わらわとて、かつての人間の魔術師の言葉の受け売りでしかないからのぉ」
困った様な顔をしてグウィネヴィアとメイヴを眺める撫子。
「料理にたとえましょう。
オーラが材料でマナが調味料です。
で、包丁で刻んだり、鍋で煮たりして料理を作ることが魔法なのです」
メイヴの説明でやっと心に言葉の意味がしみこんでゆく。
「なんとなく理解はできた。
撫子が星と繋がって……」
自分で言おうとした言葉が詰まる。
ちょっと待て。あいつは今、何を言った?
「そうじゃ。わらわは星そのものと繋がっているのじゃ。
で、古代魔法文明はわらわ達竜を使役して星そのものから魔力を得ていたのじゃ」
撫子の言葉を冷静に聞けない。
目の前にある魔力の塊である卵、星と繋がる竜、夜毎続けられる撫子との睦言。
「うむ。博之の考えているとおりじゃ。
古代魔法文明の魔力の源はわらわ達竜を犯して作られた魔竜玉によって成り立っておったのじゃ」
そして場が静かになる。
三人の視線が俺を見つめる。
「博之。メイヴもグウィネヴィアもわらわの眷属じゃ。
ここにはお主一人ゆえ、人の見栄や面子など捨てて答えてほしい。
今のわらわは博之のものじゃ。
わらわと交わる事によって、今の博之は古代魔法文明の源を生み出しておるのじゃ。
博之がその気になれば、この世界、いや博之の世界すらお主の意のままに操れるであろう。
博之はわらわを手に入れて何をしようとするのじゃ?」
いつものような少し甘えるような声で、とんでもない問いを投げつけてくる撫子。
とりあえず、俺は立ち上がる。
ずかずかと撫子の前まで歩いて。
撫子の頭を思いっきり殴る事にした。
「痛いのじゃ!
いたいのじゃ!!
博之、何をするのじゃ!!!」
「うるさい!
この馬鹿竜がっ!
そういう冗談は時と場所を選びやがれ!」
涙目で頭をさすりながら俺に怒鳴り返す撫子。
なお、この成り行きにメイヴもグウィネヴィアも固まったまま。
「冗談じゃないのじゃ!
イッソスの港でマンティコアを見たであろうが!
ああいうものを作り動かす源を博之が握っているのじゃ!!
それを何故自分の為に使おうとせぬのじゃ!!」
「お前だって、そのマンティコアが沈んだ所を見ただろうが!
人間を舐めるな!
人間の欲望を舐めるな!!
お前を犯す事で成り立つ非効率な魔法文明なんぞ、改良するに決まっているだろうが!!!」
「は?」
撫子が涙目のまま目を点にする。
そのすきに俺は自分で殴った撫子の頭に手を置いてぐりぐりと撫でてやる。
「そうなったらお前はお役ご免だろ。
自分の為に、自分の幸せを探せ。
俺は自由奔放に振舞う撫子が好きなんだからな」
きょとんとする撫子。その目から涙が止まらない。
「お、おかしいのじゃ。
な、博之のげんこつが痛くて涙が止まらないのじゃ」
そのまま撫子を抱きしめてやる。
「そういう時、女は泣くもんだ」
「う…博之ぃ…博之ぃ……」
俺の胸の中で、撫子は泣いた。
泣く撫子をあやしながら俺は確信した。
撫子は、何も知らないからこそ純粋なのだ。
きっと、過去撫子を手に入れた勇者とか魔道師などは彼女を道具でしか見ていなかったのだろうな。
彼女を使えば世界が征服できる。
凄く魅力的な言葉だ。
けど、俺は撫子自身が幸せになってもらいたかった。
それは、撫子と同じ顔をして俺を生かす為だけに命を縮めた姉への贖罪でもある。
姉と撫子は違うとは分かってはいるが、姉のように誰かの為に生きて欲しくは無かった。
今の俺は誰かに守ってもらうだけの人間ではない。
撫子を守りたい。この何も知らない馬鹿竜にもっと世界の事を知ってもらいたい。
「ぅ…馬鹿は余計なのじゃ…」
「おとなしく泣いてろ」
十数分俺の腕で泣いた撫子は、その後メイヴとグウィネヴィアを連れてこの世界と地球を繋ぐ儀式を行った。
その時の撫子はいつものように戻っていた。
結局、俺達は2日ほど滞在した。
帰りの零式水偵にグウィネヴィアを乗せて、三角州の駐屯地に帰ってきた時、見慣れない生き物がいた。
うさぎ耳と狐耳の女達である。
もちろん美人。
だが、困るのが目のやり場。
姿は完全に人間。頭に狐耳やうさぎ耳がついてぴこぴこ揺れていなければ。
お尻のほうを見ると狐耳の方に尻尾がふさふさと揺れている。
というか、しっぽの数が1.2.3…九本?
後で聞くと、狐耳族の娘達は長生きすればするほど尻尾は増えるらしい。
うさぎ耳を見ると真ん丸いしっぽがお尻と腰の間ぐらいにちょこんとついていた。
で、裸。
胸は曝け出しているし、下は布の前張りのみ。
「撫子。この美人もお前の眷属か?」
「違うぞ。博之。
一部眷属というべきだろうな」
よく分からない理由を述べる撫子に対して何か言おうとしたら、遠藤が駆け寄ってきた。
「真田!
良く帰ってきてくれた!!
良く帰ってきてくれたぁぁ!!」
離せ気持ち悪い。
というかしがみつくな。
何があった?こいつがこんな奇怪な行動に出る事はと思ったらその元凶もやってきた。
「遠藤さまぁ♪」
「おい。遠藤。何をした?」
目を逸らしながら問い詰めると、しどろもどろしながら遠藤はまとわりつく黒長耳族の娘を無視するように呟いた。
「いやな。
メイヴがいない間、ちょっと別の子に手を出したらな……」
嬉しそうに首輪を見せつけて黒長耳族の娘さんが遠藤の言葉を引き継いだ。
「凄いんですよ!
遠藤さまって、私を寝かせずに朝まで狂わせてくれたんですからぁ!
こんなに気持ちよかったのって150年近く生きて初めてですぅ♪
もう、フィンダヴェアは遠藤さまの虜ですぅ♪」
「……」
「……」
「……」
撫子、メイヴ、グウィネヴィアの冷たい視線が遠藤に突き刺さる。
「言い忘れましたが、撫子さまや私みたいに常時艶気を出している訳ではなくって、ダークエルフは比較的人間に近いのですよ。
ただ、人様より長く生きているのでその技巧が卓越していったというだけで」
とても白々しくメイヴが死刑宣告を言ってのける。
「そういえば、遠藤は目標5分とかでメイヴにひたすら抱き続けていたからのぉ。
サキュバスの精気が移ってもおかしくはなかろうて」
追い討ちをかける撫子。みんないい具合に鬼畜だ。
「よう。同胞。
お前も闇夜を歩けないようになったな」
「いやだぁぁぁぁ!!
こんな鬼畜と同じ扱いはいやだぁぁぁぁ!!!!」
まてやこら。誰が鬼畜だ誰が。
「私とメイヴと撫子さまの主従三人丼……」
グウィネヴィアさん。お願いですから黙ってください。
「真田。てめぇこんな綺麗な娘さんまで手にかけやがったのか!
この鬼畜!外道!地獄に落ちやがれ!!」
「やかましいわ!俺と同じ道を突き進む遠藤さま。
懐いた以上は責任持って何とかしやがれ!」
「心配しないでください!
このフィンダヴェア、遠藤さまの性奴隷としていつでも何処でも好きな時に犯していただけるのでしたら、他の女に手を出しても問題なしです!」
主が主なら従も従だな。こいつら。
「失礼な事をいうのぉ。
世界で生きる為に、強者の精をもらうのは牝として当然の義務ぞ」
と、主である馬鹿竜は仰っている訳で。
「あ、あのぉ……」
「僕達の事忘れてる?」
ぽつりと存在感を主張する狐耳とうさぎ耳によってやっと馬鹿騒ぎから戻る事になった。
愛国丸の食堂では、派遣船団首脳が一同に頭を悩ませていた。
もちろん理由は、俺がいない間にやってきた愛らしくも恥ずかしいこの獣人達の事である。
「服を着るのをいやがってのぉ……」
呆けた感じでお茶を飲む西村少将の疲れ切った声で押して知るべし。
彼女達曰く、寒くなったら自毛で温まるので服などいらないとの事。
試しに冬季バージョンをみせてもらったがこれが卑猥な事はなばなしい。
ふかふかの毛が体全身を覆うのはいい。
問題は、顔と胸と股間だけ毛が生えないこと。
「だって、胸は子供に乳を飲ませるために必要ではないですか?」
「股間まで毛で覆っちゃうとおしっことかする時汚れちゃうよぉ」
ちなみに、丸まって寝るのできちんと毛で隠れないところも暖められるとの事。
彼女達の説明はもの凄く正しいかつまっとうであるがゆえに見事なまでに頭を抱える。
その頭を抱える理由がいまいち理解できない馬鹿竜は、
「うむ!生物的に正しいのぉ。
そうじゃ博之。わらわも彼女達みたいな格好をするというのは……」
最後まで言わせずに馬鹿竜にげんこつをお見舞いした。
「痛いのじゃ!博之!!
そんなに馬鹿馬鹿言うでない!
生物的に正しいとお主とていうたであろうが!」
「やかましい!
いい加減に人間様のじょーしきとやらを学びやがれ!」
きゃーきゃー騒ぐ俺達にぽそりとグウィネヴィアが呟いた。
「人様の常識では、三人同時に奉仕というのは……」
「ごめんなさい。グウィネヴィアさん。
もう言いませんからしばらく黙っていてください」
メイヴが存在感を消してふっと現れるたちの悪さだが、グウィネヴィアはぽそっと存在感のあるかつ致命的な一言を囁いてくるから余計にたちが悪い。
まぁ、撫子を含めてあの三人はたちが悪いという事にしておこう。
「そのたちが悪い三人を裸で並べて寝かさずに犯し……」
おねがいですからグウィネヴィアさん。
思っている事を読まないでください。
こっそりと微笑むグウィネヴィア。了解したと言いたげなのでそのまま話を強引に戻すことにした。
で、何でも、俺達が飛び立った後に鏡の川の対岸にこいつらが現れたらしい。
長耳族、黒長耳族の娘たちに話を聞くと「ここにいるのは珍しいが害は無い」という事で放置しておいたのだが、彼女達は斥候だったらしく、昨日には対岸に彼女達が数百人も現れて大騒ぎとなったらしい。
で、今日、長耳族の娘がグウィネヴィアに伝える為に世界樹の方に戻って行った時に俺の零式水偵が帰ってきた訳という事。
「フォーヴッド--うさぎ耳の彼女たちの種族の名前です--と、ライシアン--狐耳の彼女達の種族の名前です--は、この『虚無の平原』の南に位置する森林地帯『緑壁の森』に本来生息しています。
ちなみに、かつての『グウィネヴィアの森』はこの『緑壁の森』まで続いていたのです」
とグウィネヴィア自身が説明する。
メイヴと並んで座っているから皆目で比較する事は仕方ない。
「彼女達は古代魔法文明が奴隷や捕まえたエルフなどを使って作り出した愛玩用の生き物でした。
ですが、大崩壊により逃げ出した彼女たちが野生化して『緑壁の森』に住み着いたのです。
その頃、既に私達エルフは全員この『グウィネヴィアの森』に逃げており彼女達は新しい住処で森と共存して暮らしていたんです」
なるほどな。それで「一部眷属」という撫子の言葉の理由がついた。
「はい。そちらのエルフの方の言うとおりです」
「僕達は森の中で静かに暮らしていたんだ」
フレイヤと名乗った狐耳族の長とディアナと名乗ったうさぎ耳族の長は耳をぴこぴこ揺らしながら窮状を訴えた。
「他にも、『緑壁の森』には沢山の獣人の種族があるんだ。
ところが、最近、人間達が森の中に入りだして、僕達を狩りに来るんだ」
ディアナの言葉にフレイヤが補足した。
「狼男族、牛男族、熊男族、馬男族、豚男族……
かつてはうまく共存できていた獣人族は人間が来てから争うようになって、それで私たちは森を捨てて、虚無の平原を越えてここにやってきたんです」
なお、獣人系には大きく分けて二種類があり、男性種しかない戦闘用種族の事を「○男族」とつけ、愛玩用や支援用の女性用獣人を「○耳族」と呼ぶらしい。
当然異種族交尾となり、生まれの性別によってどちらの種族かが引き取ってゆく事となる。
とりあえず、理由は分かった。
だが、問題はその先だった。
「私達の種族は先駆けにすぎません。
既に多くのフォーウッドやライシアンが森を捨ててこちらに逃れてきています。
ドライアドのグウィネヴィア。どうか私達を助けてください」
「な……」
グウィネヴィアもさすがに言葉が出ない。
フレイヤやディアナが率いた一族だけなら助ける事もできるだろう。
問題はその先だ。
どれぐらいの数になるのか分からない、フォーウッドとライシアンを全て受け入れた時に森のバランスが保てるのか?
森はグウィネヴィアの力の源だ。
しかもこれからの異世界往還を管理する彼女の魔力の源を荒らされたくは無い。
「助けてやれ。グウィネヴィア」
自分に助けを求められたかのように撫子があっさりと言ってのけた。
まぁ、グウィネヴィアも撫子の眷属であるがゆえに撫子が差配するのは当然なのかもしれない。
「どうせ、ここには100万の人間が来る事になる。
この虚無の平原を豊かな大地にする為にの。
彼女達にもその手伝いをしてもらおうではないか」
今までの撫子とは違うほど威厳のある声に誰もが襟を正す。
「フォーウッドのディアナにライシアンのフレイヤ。
お主達の生活は竜である撫子が保障しようぞ」
「ありがとうございます」
涙を流して二人同時に撫子に向けて頭を下げた。
自分達の一族を守る為に多くの仲間を失ってここに来た苦労が報われたのだから感慨もひとしおだろう。
「ただし、今のわらわはそこにいる博之の世話になっている身。
その博之が所属する大日本帝国に忠誠を尽くすのじゃ」
「フォーウッドの一族の長ディアナ。
一族共々大日本帝国に忠誠を誓います」
「同じくライシアンの一族の長フレイヤ。
一族共々大日本帝国に忠誠を誓います」
皆がぽかーんとあっけに取られた電光石火の早業だった。
こうなってしまったら、「駄目」といえる訳がない。
「わかった。わかった。
内海局長。お任せしてよろしいですな?」
と苦笑する西村少将に内海局長も肩をすくめてみせた。
「撫子さまのお願いですから何とかしましょう。
ちなみに何か特技はあるのですか?」
「僕達は穴を掘るのが得意です!」
「私達は何処にでも住む事ができますし、人よりも体力がありますわ」
そして二人して同じ事を言った。
「「そして、男性に抱かれるのが大好きです!!」」
場が見事なまでに凍る。
というか、我が大日本帝国は異世界に来て娼婦漁りをしにきたと後世に書かれるのだろうなと思いながら撫子に皮肉を言ってのけた。
「たしかにこいつらはお前の眷属だな」
「そうであろう。たくさん奉仕するからかわいがってやるのじゃぞ♪」
自信満々に『いい事したであろう?褒めて褒めて』オーラを出す撫子に何をいってやろうかと思ったが期待に沿えて頭をなでてやる事にした。
「あ、そうです。
一つ決めて欲しい事が」
思い出したように撫子の方を向く内海局長。
「なんじゃ?」
「この三角州の名前ですよ。
書類上必要なので。長耳族に尋ねても『考えた事がなかった』と言われたので」
俺が、横から口を挟んだ。
「そっちで決めてしまえばよかったのでは?」
「これからの生活を始める場所だからな。
霊験あらたかな撫子どのに土地の名付け親になってもらおうという訳さ。
以外にこういうのは馬鹿にならないのでな」
駐屯地に残る佐藤大佐の説明で納得。
「そうじゃのぉ……
何でもいいんじゃな?」
「撫子さまのお好きなように」
にやりと笑う撫子。こういう笑みはよくない事を考えているに違いない。
「ならば決まっておろう。
わらわと同じ名前、『撫子』をこの土地に捧げよう」
これが後に西方世界最大の巨大都市『撫子市』の始まりになるとはこの時誰も分かるはすがなかった。
なお、フォーウッドもライシアンも多くが日本に渡り、フォーウッドは穴掘り要員として炭鉱やトンネル工事現場に。
ライシアンはその適応力の高さと人以上の体力から農作業や工事現場で働き、そこで共に働く日本男子にその体を与えて幸せに暮らしたという。
1942年4月3日
更に三日ほどかけて撫子と名づけられた三角州で駐屯地整備をしてから船団は日本に戻った。
グウィネヴィアと別れ、駐屯部隊と入れ違いに大漁に乗せられるメイヴのダークエルフ達と急遽やってきたフォーウッドとライシアンも全員が乗っていた。
まぁ、転移が一瞬で下田につくのだからという判断なのだが、おかげで愛国丸は女の園と化している。
で、転移が無事に済んで下田の港を見てみると、厳戒態勢がしかれていた。
哨戒なのか空には何か飛んでいる音が聞こえるし、沖には何隻か軍艦が停泊している。
接岸し、船を下りると堀社長が俺達を出迎えてくれた。
「すまんな。
こんな騒々しい出迎えで」
「何かあったのですか?」
あっさりとかつ不気味な一言を堀社長は言ってのけた。
「つい三日前から極東全域でソ連が無線封鎖を実施中だ。
攻撃をしかけるのではないかと大本営は全ての国境で臨戦態勢に入っている」
と。
帝国の竜神様 21
この鏡の川にある竜宮から世界樹までが一番の集落だという。
皆、集落の物陰から興味津々で零式水偵を眺めている。
まぁ、こちらもエルフをじろじろ見ているからお互い様という所か。
彼女達が身に着けている服は貫頭衣なのだろうが、紐を使い腰で縛るから胸が強調されることこの上ない。
というか、エルフに貧乳という言葉は存在しないと見た。
(何をじろじろ見ているのじゃ?)
と、撫子が突っ込むが無視。
男には胸とは浪漫なのだ。
(何を訳の分からない事を言うておる。わらわの胸を散々見ているではないか)
更に無視しつつ、今度はエルフの女兵士の方に。
皮の鎧をつけ皆、弓を手にしている。
腰には短刀を差しており盾は持っているように見えない。
銃器で襲われたらあっという間だろうな。
「イッソスで見た空中騎士ですら鉄の防具を用意しているのだが、人間達が来た時はどうやって撃退するのだろうな?」
「その為の魔法ですわ」
俺の口に出した問いにメイヴが答えた。
「魔法とはこの世界に直結した理ですから、そこの優劣でほぼ勝負がついてしまいます。
魔力が強い分、この森の中でなら簡単には負けないでしょう。ただ……」
メイヴは言いにくそうに口を閉じた。
その先は人間である俺ならば言わなくても分かっている。
人間の強欲さと組織的行動は絶対数で少ないエルフを圧倒するし、事実大崩壊という惨事がなければこの森も虚無の平原みたいに刈り取られていたのだろう。
ましてや、これからエルフに起こるであろう災難は間違いなく俺達が引き起こした事だ。
世界樹の巨大な幹につくと、上空に上る三人ぐらいが入れる籠が置いてあった。
グウィネヴィアはこの世界樹の上に館を構えているという。
幹の中にも繰り抜いた道があり、籠が苦手な人などはそこから上がるらしい。
しかし、1000メートルを上るというのはかなり時間がかかる。
ゆるゆると、眼下に広がる森林を眺めながら10数分後にやっと世界樹の上に到着。
枝葉をうまく使って足場を作ったツリーハウスがそこにはあちこちにあった。
「元々はこの世界樹の中だけエルフの集落があったのですが、追われたエルフやダークエルフがこの森に住み着いて時間と共にエルフも増えてきて下に里を作り、また更に森のあちこちに里ができていったのです」
ふと疑問に思ったので言って見た。
「メイヴ。素朴な疑問なのだが、女しかいないのにどうやって増えるんだ?」
「どちらかが女のまま男性のものを生やす事が一つと、私達は動物とも交わって子を成す事ができるのです。
森の息吹に動物も欠かせないので彼ら動物との交尾と養育も私達の大事な営みなのですわ」
ストレートに強烈な事を言ってのけるメイヴ。
「という事は、森の動物が交尾をしたら遺伝上まったく違うエルフが鹿や熊の夫婦から生まれてくるという可能性があるという事か?」
「はい。そういうエルフを見つけて育てるのもエルフの仕事なのですわ」
なお、そういうエルフが成長すると獣化して親の獣に戻るか、育ったエルフの集落を離れて新たな集落を起こすのが常らしい。
グウィネヴィアの館は、この広大な森林地帯を治める者にしては小さすぎた。
姉が妾になった伯爵の家の方が多分大きい。
「どうぞおかけになってください」
部屋の中央に獣の絨毯を敷き詰めた部屋に通され、当たり前のように撫子が中央に座る。
その左右にメイヴとグウィネヴィア、客人の位置に俺。
じゃれあって忘れそうになるが、撫子こそこのエルフ達を使役する竜なんだよなぁ。
「で、だ。
わらわは博之のいる世界に世話になるので、こっちにとどまり続けることができぬ」
「はい」
「承知いたしました」
即決かよ。
まぁ、こいつらテレパスが使えるから細かい所はもう詰めていたのかもしれないな。
「さて、ここに来たのはこの世界と博之たちの世界とを繋げる穴を作ることじゃ。
この穴があれば双方の世界のマナが往来し、わらわが繋がる龍脈をこの世界樹に繋げ、人や物の往来が可能になろう。
その儀式をせねばならぬ」
これこそ、この世界樹に来た理由だったりする。
異世界への往還は単体の撫子すら扱えないほどの魔力を必要とする。
異世界へ魔力で穴をあけ、そこから撫子の契約した日本の龍脈をこちらに引き寄せて霊験らたかな世界樹に宿らせる。
この作業で撫子は地球と異世界双方で無尽蔵の魔力が行使でき、異世界往還の道が作られる。
なお、日本ではメイヴかその母祖たるダーナが撫子の龍脈魔力を代行し、異世界ではグウィネヴィアがその役を司る。
グウィネヴィアが俺達の前に卵を持ってくる。
その卵は人の頭ほどある巨大な物で、虹色に淡く輝いている。
俺はつい最近、これを散々夜から朝にかけて見たことがある。
撫子を抱いた後に彼女が生む卵と同じなのだ。
何故だか知らないが背中がとても寒い。
「かつて、撫子様が古代魔法文明時にお作りになられた魔竜玉ですわ。
この中に込められた魔力と撫子様が持つ魔力を足して博之様の世界に穴を開けます」
やっぱりか。
零式水偵の中にあるグウィネヴィアへの品にそれが数個あったりする。
「前々から聞きたかったのだが、撫子、いや竜というのは魔法にとって一体どういうものなんだ?」
グウィネヴィアとメイヴの顔がこわばるがそれを撫子が手で制した。
「よい。
わらわは博之のものなのでな。
そろそろ話してもいいであろう」
今までで一番凛々しく貫くような瞳で俺を見つめた撫子はゆっくりと口を開いた。
「この世界は博之たちの言う魔法という概念で構成されておる。
この魔法というのは更にオーラとマナという概念に分かれるのじゃ。
オーラというのはその存在そのものが持つ本質的な力、
マナというのは、世界構成における変換情報とかつてこの世界の人間は定義しておった。
ちなみに、わらわが契約した竜脈というのは『星の命』そのものじゃ。
それゆえ、種の頂点に立つ絶対種としてわらわ達竜は存在しているという話らしいの」
まじめな顔で聞く俺だが、専門用語が多すぎでよく分からない。
「すまん。撫子。俺にもわかる言葉でしゃべってくれ」
「とはいわれてものぉ……
わらわとて、かつての人間の魔術師の言葉の受け売りでしかないからのぉ」
困った様な顔をしてグウィネヴィアとメイヴを眺める撫子。
「料理にたとえましょう。
オーラが材料でマナが調味料です。
で、包丁で刻んだり、鍋で煮たりして料理を作ることが魔法なのです」
メイヴの説明でやっと心に言葉の意味がしみこんでゆく。
「なんとなく理解はできた。
撫子が星と繋がって……」
自分で言おうとした言葉が詰まる。
ちょっと待て。あいつは今、何を言った?
「そうじゃ。わらわは星そのものと繋がっているのじゃ。
で、古代魔法文明はわらわ達竜を使役して星そのものから魔力を得ていたのじゃ」
撫子の言葉を冷静に聞けない。
目の前にある魔力の塊である卵、星と繋がる竜、夜毎続けられる撫子との睦言。
「うむ。博之の考えているとおりじゃ。
古代魔法文明の魔力の源はわらわ達竜を犯して作られた魔竜玉によって成り立っておったのじゃ」
そして場が静かになる。
三人の視線が俺を見つめる。
「博之。メイヴもグウィネヴィアもわらわの眷属じゃ。
ここにはお主一人ゆえ、人の見栄や面子など捨てて答えてほしい。
今のわらわは博之のものじゃ。
わらわと交わる事によって、今の博之は古代魔法文明の源を生み出しておるのじゃ。
博之がその気になれば、この世界、いや博之の世界すらお主の意のままに操れるであろう。
博之はわらわを手に入れて何をしようとするのじゃ?」
いつものような少し甘えるような声で、とんでもない問いを投げつけてくる撫子。
とりあえず、俺は立ち上がる。
ずかずかと撫子の前まで歩いて。
撫子の頭を思いっきり殴る事にした。
「痛いのじゃ!
いたいのじゃ!!
博之、何をするのじゃ!!!」
「うるさい!
この馬鹿竜がっ!
そういう冗談は時と場所を選びやがれ!」
涙目で頭をさすりながら俺に怒鳴り返す撫子。
なお、この成り行きにメイヴもグウィネヴィアも固まったまま。
「冗談じゃないのじゃ!
イッソスの港でマンティコアを見たであろうが!
ああいうものを作り動かす源を博之が握っているのじゃ!!
それを何故自分の為に使おうとせぬのじゃ!!」
「お前だって、そのマンティコアが沈んだ所を見ただろうが!
人間を舐めるな!
人間の欲望を舐めるな!!
お前を犯す事で成り立つ非効率な魔法文明なんぞ、改良するに決まっているだろうが!!!」
「は?」
撫子が涙目のまま目を点にする。
そのすきに俺は自分で殴った撫子の頭に手を置いてぐりぐりと撫でてやる。
「そうなったらお前はお役ご免だろ。
自分の為に、自分の幸せを探せ。
俺は自由奔放に振舞う撫子が好きなんだからな」
きょとんとする撫子。その目から涙が止まらない。
「お、おかしいのじゃ。
な、博之のげんこつが痛くて涙が止まらないのじゃ」
そのまま撫子を抱きしめてやる。
「そういう時、女は泣くもんだ」
「う…博之ぃ…博之ぃ……」
俺の胸の中で、撫子は泣いた。
泣く撫子をあやしながら俺は確信した。
撫子は、何も知らないからこそ純粋なのだ。
きっと、過去撫子を手に入れた勇者とか魔道師などは彼女を道具でしか見ていなかったのだろうな。
彼女を使えば世界が征服できる。
凄く魅力的な言葉だ。
けど、俺は撫子自身が幸せになってもらいたかった。
それは、撫子と同じ顔をして俺を生かす為だけに命を縮めた姉への贖罪でもある。
姉と撫子は違うとは分かってはいるが、姉のように誰かの為に生きて欲しくは無かった。
今の俺は誰かに守ってもらうだけの人間ではない。
撫子を守りたい。この何も知らない馬鹿竜にもっと世界の事を知ってもらいたい。
「ぅ…馬鹿は余計なのじゃ…」
「おとなしく泣いてろ」
十数分俺の腕で泣いた撫子は、その後メイヴとグウィネヴィアを連れてこの世界と地球を繋ぐ儀式を行った。
その時の撫子はいつものように戻っていた。
結局、俺達は2日ほど滞在した。
帰りの零式水偵にグウィネヴィアを乗せて、三角州の駐屯地に帰ってきた時、見慣れない生き物がいた。
うさぎ耳と狐耳の女達である。
もちろん美人。
だが、困るのが目のやり場。
姿は完全に人間。頭に狐耳やうさぎ耳がついてぴこぴこ揺れていなければ。
お尻のほうを見ると狐耳の方に尻尾がふさふさと揺れている。
というか、しっぽの数が1.2.3…九本?
後で聞くと、狐耳族の娘達は長生きすればするほど尻尾は増えるらしい。
うさぎ耳を見ると真ん丸いしっぽがお尻と腰の間ぐらいにちょこんとついていた。
で、裸。
胸は曝け出しているし、下は布の前張りのみ。
「撫子。この美人もお前の眷属か?」
「違うぞ。博之。
一部眷属というべきだろうな」
よく分からない理由を述べる撫子に対して何か言おうとしたら、遠藤が駆け寄ってきた。
「真田!
良く帰ってきてくれた!!
良く帰ってきてくれたぁぁ!!」
離せ気持ち悪い。
というかしがみつくな。
何があった?こいつがこんな奇怪な行動に出る事はと思ったらその元凶もやってきた。
「遠藤さまぁ♪」
「おい。遠藤。何をした?」
目を逸らしながら問い詰めると、しどろもどろしながら遠藤はまとわりつく黒長耳族の娘を無視するように呟いた。
「いやな。
メイヴがいない間、ちょっと別の子に手を出したらな……」
嬉しそうに首輪を見せつけて黒長耳族の娘さんが遠藤の言葉を引き継いだ。
「凄いんですよ!
遠藤さまって、私を寝かせずに朝まで狂わせてくれたんですからぁ!
こんなに気持ちよかったのって150年近く生きて初めてですぅ♪
もう、フィンダヴェアは遠藤さまの虜ですぅ♪」
「……」
「……」
「……」
撫子、メイヴ、グウィネヴィアの冷たい視線が遠藤に突き刺さる。
「言い忘れましたが、撫子さまや私みたいに常時艶気を出している訳ではなくって、ダークエルフは比較的人間に近いのですよ。
ただ、人様より長く生きているのでその技巧が卓越していったというだけで」
とても白々しくメイヴが死刑宣告を言ってのける。
「そういえば、遠藤は目標5分とかでメイヴにひたすら抱き続けていたからのぉ。
サキュバスの精気が移ってもおかしくはなかろうて」
追い討ちをかける撫子。みんないい具合に鬼畜だ。
「よう。同胞。
お前も闇夜を歩けないようになったな」
「いやだぁぁぁぁ!!
こんな鬼畜と同じ扱いはいやだぁぁぁぁ!!!!」
まてやこら。誰が鬼畜だ誰が。
「私とメイヴと撫子さまの主従三人丼……」
グウィネヴィアさん。お願いですから黙ってください。
「真田。てめぇこんな綺麗な娘さんまで手にかけやがったのか!
この鬼畜!外道!地獄に落ちやがれ!!」
「やかましいわ!俺と同じ道を突き進む遠藤さま。
懐いた以上は責任持って何とかしやがれ!」
「心配しないでください!
このフィンダヴェア、遠藤さまの性奴隷としていつでも何処でも好きな時に犯していただけるのでしたら、他の女に手を出しても問題なしです!」
主が主なら従も従だな。こいつら。
「失礼な事をいうのぉ。
世界で生きる為に、強者の精をもらうのは牝として当然の義務ぞ」
と、主である馬鹿竜は仰っている訳で。
「あ、あのぉ……」
「僕達の事忘れてる?」
ぽつりと存在感を主張する狐耳とうさぎ耳によってやっと馬鹿騒ぎから戻る事になった。
愛国丸の食堂では、派遣船団首脳が一同に頭を悩ませていた。
もちろん理由は、俺がいない間にやってきた愛らしくも恥ずかしいこの獣人達の事である。
「服を着るのをいやがってのぉ……」
呆けた感じでお茶を飲む西村少将の疲れ切った声で押して知るべし。
彼女達曰く、寒くなったら自毛で温まるので服などいらないとの事。
試しに冬季バージョンをみせてもらったがこれが卑猥な事はなばなしい。
ふかふかの毛が体全身を覆うのはいい。
問題は、顔と胸と股間だけ毛が生えないこと。
「だって、胸は子供に乳を飲ませるために必要ではないですか?」
「股間まで毛で覆っちゃうとおしっことかする時汚れちゃうよぉ」
ちなみに、丸まって寝るのできちんと毛で隠れないところも暖められるとの事。
彼女達の説明はもの凄く正しいかつまっとうであるがゆえに見事なまでに頭を抱える。
その頭を抱える理由がいまいち理解できない馬鹿竜は、
「うむ!生物的に正しいのぉ。
そうじゃ博之。わらわも彼女達みたいな格好をするというのは……」
最後まで言わせずに馬鹿竜にげんこつをお見舞いした。
「痛いのじゃ!博之!!
そんなに馬鹿馬鹿言うでない!
生物的に正しいとお主とていうたであろうが!」
「やかましい!
いい加減に人間様のじょーしきとやらを学びやがれ!」
きゃーきゃー騒ぐ俺達にぽそりとグウィネヴィアが呟いた。
「人様の常識では、三人同時に奉仕というのは……」
「ごめんなさい。グウィネヴィアさん。
もう言いませんからしばらく黙っていてください」
メイヴが存在感を消してふっと現れるたちの悪さだが、グウィネヴィアはぽそっと存在感のあるかつ致命的な一言を囁いてくるから余計にたちが悪い。
まぁ、撫子を含めてあの三人はたちが悪いという事にしておこう。
「そのたちが悪い三人を裸で並べて寝かさずに犯し……」
おねがいですからグウィネヴィアさん。
思っている事を読まないでください。
こっそりと微笑むグウィネヴィア。了解したと言いたげなのでそのまま話を強引に戻すことにした。
で、何でも、俺達が飛び立った後に鏡の川の対岸にこいつらが現れたらしい。
長耳族、黒長耳族の娘たちに話を聞くと「ここにいるのは珍しいが害は無い」という事で放置しておいたのだが、彼女達は斥候だったらしく、昨日には対岸に彼女達が数百人も現れて大騒ぎとなったらしい。
で、今日、長耳族の娘がグウィネヴィアに伝える為に世界樹の方に戻って行った時に俺の零式水偵が帰ってきた訳という事。
「フォーヴッド--うさぎ耳の彼女たちの種族の名前です--と、ライシアン--狐耳の彼女達の種族の名前です--は、この『虚無の平原』の南に位置する森林地帯『緑壁の森』に本来生息しています。
ちなみに、かつての『グウィネヴィアの森』はこの『緑壁の森』まで続いていたのです」
とグウィネヴィア自身が説明する。
メイヴと並んで座っているから皆目で比較する事は仕方ない。
「彼女達は古代魔法文明が奴隷や捕まえたエルフなどを使って作り出した愛玩用の生き物でした。
ですが、大崩壊により逃げ出した彼女たちが野生化して『緑壁の森』に住み着いたのです。
その頃、既に私達エルフは全員この『グウィネヴィアの森』に逃げており彼女達は新しい住処で森と共存して暮らしていたんです」
なるほどな。それで「一部眷属」という撫子の言葉の理由がついた。
「はい。そちらのエルフの方の言うとおりです」
「僕達は森の中で静かに暮らしていたんだ」
フレイヤと名乗った狐耳族の長とディアナと名乗ったうさぎ耳族の長は耳をぴこぴこ揺らしながら窮状を訴えた。
「他にも、『緑壁の森』には沢山の獣人の種族があるんだ。
ところが、最近、人間達が森の中に入りだして、僕達を狩りに来るんだ」
ディアナの言葉にフレイヤが補足した。
「狼男族、牛男族、熊男族、馬男族、豚男族……
かつてはうまく共存できていた獣人族は人間が来てから争うようになって、それで私たちは森を捨てて、虚無の平原を越えてここにやってきたんです」
なお、獣人系には大きく分けて二種類があり、男性種しかない戦闘用種族の事を「○男族」とつけ、愛玩用や支援用の女性用獣人を「○耳族」と呼ぶらしい。
当然異種族交尾となり、生まれの性別によってどちらの種族かが引き取ってゆく事となる。
とりあえず、理由は分かった。
だが、問題はその先だった。
「私達の種族は先駆けにすぎません。
既に多くのフォーウッドやライシアンが森を捨ててこちらに逃れてきています。
ドライアドのグウィネヴィア。どうか私達を助けてください」
「な……」
グウィネヴィアもさすがに言葉が出ない。
フレイヤやディアナが率いた一族だけなら助ける事もできるだろう。
問題はその先だ。
どれぐらいの数になるのか分からない、フォーウッドとライシアンを全て受け入れた時に森のバランスが保てるのか?
森はグウィネヴィアの力の源だ。
しかもこれからの異世界往還を管理する彼女の魔力の源を荒らされたくは無い。
「助けてやれ。グウィネヴィア」
自分に助けを求められたかのように撫子があっさりと言ってのけた。
まぁ、グウィネヴィアも撫子の眷属であるがゆえに撫子が差配するのは当然なのかもしれない。
「どうせ、ここには100万の人間が来る事になる。
この虚無の平原を豊かな大地にする為にの。
彼女達にもその手伝いをしてもらおうではないか」
今までの撫子とは違うほど威厳のある声に誰もが襟を正す。
「フォーウッドのディアナにライシアンのフレイヤ。
お主達の生活は竜である撫子が保障しようぞ」
「ありがとうございます」
涙を流して二人同時に撫子に向けて頭を下げた。
自分達の一族を守る為に多くの仲間を失ってここに来た苦労が報われたのだから感慨もひとしおだろう。
「ただし、今のわらわはそこにいる博之の世話になっている身。
その博之が所属する大日本帝国に忠誠を尽くすのじゃ」
「フォーウッドの一族の長ディアナ。
一族共々大日本帝国に忠誠を誓います」
「同じくライシアンの一族の長フレイヤ。
一族共々大日本帝国に忠誠を誓います」
皆がぽかーんとあっけに取られた電光石火の早業だった。
こうなってしまったら、「駄目」といえる訳がない。
「わかった。わかった。
内海局長。お任せしてよろしいですな?」
と苦笑する西村少将に内海局長も肩をすくめてみせた。
「撫子さまのお願いですから何とかしましょう。
ちなみに何か特技はあるのですか?」
「僕達は穴を掘るのが得意です!」
「私達は何処にでも住む事ができますし、人よりも体力がありますわ」
そして二人して同じ事を言った。
「「そして、男性に抱かれるのが大好きです!!」」
場が見事なまでに凍る。
というか、我が大日本帝国は異世界に来て娼婦漁りをしにきたと後世に書かれるのだろうなと思いながら撫子に皮肉を言ってのけた。
「たしかにこいつらはお前の眷属だな」
「そうであろう。たくさん奉仕するからかわいがってやるのじゃぞ♪」
自信満々に『いい事したであろう?褒めて褒めて』オーラを出す撫子に何をいってやろうかと思ったが期待に沿えて頭をなでてやる事にした。
「あ、そうです。
一つ決めて欲しい事が」
思い出したように撫子の方を向く内海局長。
「なんじゃ?」
「この三角州の名前ですよ。
書類上必要なので。長耳族に尋ねても『考えた事がなかった』と言われたので」
俺が、横から口を挟んだ。
「そっちで決めてしまえばよかったのでは?」
「これからの生活を始める場所だからな。
霊験あらたかな撫子どのに土地の名付け親になってもらおうという訳さ。
以外にこういうのは馬鹿にならないのでな」
駐屯地に残る佐藤大佐の説明で納得。
「そうじゃのぉ……
何でもいいんじゃな?」
「撫子さまのお好きなように」
にやりと笑う撫子。こういう笑みはよくない事を考えているに違いない。
「ならば決まっておろう。
わらわと同じ名前、『撫子』をこの土地に捧げよう」
これが後に西方世界最大の巨大都市『撫子市』の始まりになるとはこの時誰も分かるはすがなかった。
なお、フォーウッドもライシアンも多くが日本に渡り、フォーウッドは穴掘り要員として炭鉱やトンネル工事現場に。
ライシアンはその適応力の高さと人以上の体力から農作業や工事現場で働き、そこで共に働く日本男子にその体を与えて幸せに暮らしたという。
1942年4月3日
更に三日ほどかけて撫子と名づけられた三角州で駐屯地整備をしてから船団は日本に戻った。
グウィネヴィアと別れ、駐屯部隊と入れ違いに大漁に乗せられるメイヴのダークエルフ達と急遽やってきたフォーウッドとライシアンも全員が乗っていた。
まぁ、転移が一瞬で下田につくのだからという判断なのだが、おかげで愛国丸は女の園と化している。
で、転移が無事に済んで下田の港を見てみると、厳戒態勢がしかれていた。
哨戒なのか空には何か飛んでいる音が聞こえるし、沖には何隻か軍艦が停泊している。
接岸し、船を下りると堀社長が俺達を出迎えてくれた。
「すまんな。
こんな騒々しい出迎えで」
「何かあったのですか?」
あっさりとかつ不気味な一言を堀社長は言ってのけた。
「つい三日前から極東全域でソ連が無線封鎖を実施中だ。
攻撃をしかけるのではないかと大本営は全ての国境で臨戦態勢に入っている」
と。
帝国の竜神様 21
2008年03月06日(木) 14:23:22 Modified by nadesikononakanohito