「文化とお金」
2007/5/19公開録音「文化とお金」(Podcasting限定版)
出演:鈴木謙介、柳瀬博一、仲俣暁生、佐々木敦、斎藤哲也、津田大介、森山弘之
※以下の発言まとめは、正確な番組での発言とは異なる場合があります。
MP3その1
(黒幕:では出演者の皆様に入っていただきましょう。拍手でお迎えください。)
〜拍手〜
鈴木:こんちは!5月のLifeは公開録音ということで、スタジオをほんのちょっとだけ飛び出して、リスナーの皆様と一緒にお届けしようと思います。ま、一応、臨場感っつうの、大事なんで、ちょっと元気とか出していこうぜ。みなさん元気ですか!
(げんきでーす)
鈴木:はい、まあ、俺も仕事だからw みんな楽しくやってこう。今日は公開録音ということで、普段はひとつの机を囲んで、顔を向かい合わせながらやってるんだけど、今日はよそ行きというか、お客さんと向き合う形でステージに座っていただいているんですけど、ま、いつもの感じで喋って行ければと思います。で、今日のテーマ、「文化系と貧乏・文化とお金」ってことでウェブにも告知してたんだけど、どうも文化系っつうと、おしゃれでモテそう!ムカつく!って言われるんですけど、音楽でも文学でも、お金を使って買わないといけないってのはあるわけで、避けて通れない、シビアな問題としての「お金」を、今日はそれぞれの苦労話あたりから話していければなと思います。
早速メール。文化系はお金がかかることが多い。でもあくまで小金。それを捻出するのは数少ない小遣い。大槻ケンヂの著作で、昼飯を削って映画館に通う話があったけど、誰しもが経験したんじゃないか。パーソナリティの皆様、お金がないとき、どうやって文化に触れていましたか?豆知識をお願いしたいです。
サブパーソナリティ紹介のついでに、この話聞いてみましょう。まずは斉藤哲也さんです。斉藤さん、お金がないときどうしてました?
斉藤:お金がないとき、あまりなかったんですけど、
鈴木:おっといきなり最初から敵が増えた感じの。
斉藤:昔、僕、Z会ってところで「Z-Kan」という伝説の雑誌を作ってたんですよ。
鈴木:自分で言いますか。
斉藤:その雑誌が四号で潰れるんですけど、それで、静岡の三島にある本社に帰ってこいという話になりまして、僕は東京で仕事を続けたかったので、会社やめたんですね。なんでかっていうと、そこの柳瀬さんが「俺んとこに来いよ」って言って。
鈴木:でも、日経には入ってないですよね?
斉藤:ええ、試験受けたら落とされて。そのときお金なくなりましたね。
鈴木:軽くだまされた系ですね。そのときはどうしてたんですか?
斉藤:そらーもう文化系どころじゃないですよ。無職ですから。朝日新聞の就職情報見るので精一杯です。
鈴木:苦労時代の話は後で聞きましょうか。続いて佐々木さん。すごいラジオ向きじゃない紹介しますけど、髪切りましたね。
佐々木:そうなんですよ、もうその話題ばっかですね。想像しながら聞いてください。
鈴木:何をw お金がないときってどうしてました?
佐々木:今も昔もお金はないです。昔はもっとなかったけど。後で話題に出るかもしれないけど、文化系としては、本を読むとか音楽を聴くとかしたい。で、貸しレコード屋ってのがあって、すごいお世話になりました。あと図書館。図書館からどれだけの本が僕の手によってなくなっていったか。
鈴木:その手の犯罪告知は祭りの対象になるので、謹んでくださいw
佐々木:そのくらいお世話になったっていうね。今は多少買えるようになったってくらいかな。
鈴木:まあ昔とは状況も変わってると思うので、その辺も聞かせてください。続いてこれまた中俣さんなんですけど、お金の匂いがしないって紹介を書いたのは、64組を見てると確かにお金の匂いはしなそうなんですが。
中俣:確かにお金はないけど、そういうときどうしてたかっていうと、文化系の仕事するわけですよ。そうすると仕事なんで、音楽も聴ける、ライブも見られると。給料全部CD買っても誰も文句を言わない。お金がないときはそういう仕事のみをしてましたね。逆に言うと給料安いから、仕事じゃない部分では何も買えない。本も買えなかった。給料が出ると、50円均一の文庫の棚とか掘るんですよ。とにかくそのくらいしか本が買えないから。だから、仕事にしちゃうというのがひとつの手段でしたね。
鈴木:今は逆にそれを仕事にしちゃうことで、やりがいの搾取的な事態も起こりますよね。その辺の話も後で。続いて津田さん。えー、津田さん、髪直した方がいいっすよ。
津田:ぼさぼさで。
鈴木:ラジオ向きじゃないですねw 津田さんは「働くということ」の回で、家族全員が無職になって働かないといけなくなったって話をされてましたけど。
津田:あれいい話ですよね。
鈴木:自分で言わないw 苦労・工夫の話ってなんかありますか?
津田:子どもの頃は貧乏で、貧乏の話をすると自分語りが止まらないんで、後で。
鈴木:別の仕事であったとき「次回は貧乏で行こうと思うんですけど」ってゆったら、満面の笑みでしたもんね。
津田:貧乏っていいですよね。
鈴木:じゃあその体験談も聞かせてください。続いて森山さん。雑誌編集携わって来る中で、アーティストの人たちの中でも、貧乏話出たんじゃないかと思うんですけど。
森山:その話もしたいですね。今日はでも違う話をしようと思ってたんで。
鈴木:なになに?
森山:今日は勝負パンツをはいてきたんですけど。
鈴木:帰れ!
森山:是非、お見せする機会があれば。
鈴木:森山さん、拾いづらいw
森山:こないだキャッシュコーナーでお金をおろそうとして、「残高がありません」って言われてびっくりしました。もうすぐ34なんですけど。
鈴木:では、現役貧乏ということで、今日はよろしくお願いします。最後は柳瀬さん。今日は、なんか柳瀬さんとの距離が一番遠いんですけど、貧乏という意味でも一番遠い気がするんですが。
柳瀬:と思うでしょ?違うんですよ。
鈴木:会場からもおーという声が。
柳瀬:大学生がいかに貧乏かってくらいの貧乏を経験しまして。そのくせ働くのがイヤだったので。どうやって飢えをしのぐかの方が重要で。でもその話は単なる貧乏話になっちゃうんで。食材というか、手前の部分のテクノロジーで、試食コーナーの活用とか、あとどうやって友だちのお母さんと仲良くなるかとか。
鈴木:ご相伴にあずかっちゃうわけですね。
柳瀬:そういう貧乏がイヤだったので、僕はこの中で唯一、社蓄になってサラリーマンの生活にしがみつき、前途ある若者をマーケットに放り出す、斉藤さんのことなんですけど、そういう生活をしてます。
鈴木:そういう仕手師みたいな話も聞きましょうか。さて、メール。貧乏と言えば学生時代。常にかけもちバイトばかりしてた。ほとんどが肉体労働だったので、いま考えるとその後の役に立ってない。考えて行動した方がいい。パーソナリティの方々は、学生時代にどんなバイトをしてましたか?
こういう話だと、森山さん?雑誌編集もバイトからでしたっけ。
森山:営業の仕事を辞めて、一年くらい何もしなくて、そのあとライターを始めたんですね。
鈴木:それ以前に文化系的な仕事はしたことがなかったんですか。
森山:ないですね。マックの掃除とか。
鈴木:それはドレッドだからレジには立てないとか。
森山:あとちゃんこ屋とか。賄い付きですね。
鈴木:賄い付きのバイトしてた人って他にいます?
中俣:飲食はやったことありますよ。普通の喫茶店のウエイター。朝昼晩も食べさせてもらって。あと家庭教師は「夜ご飯を食べさせてくれ」ってのを条件にしてました。
鈴木:あー、家庭教師はありますよね。
柳瀬:大事ですよね。まずい家庭に当たると大変だけど、店屋物とってくれると非常に嬉しいみたいな。
鈴木:昔教えてた塾が間借りしているのが寿司屋で、タダ寿司。まあ最終的に僕しか先生がいなくなって潰れましたけどw でもあれは覚えてるな。あと変わったバイト、、、津田さんとか?
津田:大学の頃は薬の人体実験とかやりましたけどね。学生のポピュラーな。血圧を下げる未承認薬とか。待遇がすごくよくて、一日音楽を聴きながら本を読んだり。あと弁当がすごくうまいんです。
佐々木:ミュージシャンもよくやってるよね。何日間か入院するんだっけ?
津田:僕の場合は安いので、二泊三日を2セットで、8万くらいかな。あとはカラオケボックスでバイトしてて、暇なんじゃないかと思ってたら、ホントに暇で、2、3時間働いたらあとは何もすることないんですよ。そこにありとあらゆるマンガ誌、ヤング誌から四コマ漫画誌まで全部置いてあって、これを全部読んでました。一章のうちで一番マンガ読んでた時期ですね。
鈴木:渋谷のカラオケでもそういうところありますよね。
津田:選挙のバイトなんかもしましたねー。
鈴木:学生っぽいバイトしてるなあ。俺は塾講師とIT系しかないわ。
柳瀬:僕、ピアノ運びましたね。引っ越し屋の延長で。
鈴木:あ、僕も引っ越しは一日だけやってやめたことがあります。
柳瀬:引っ越しはいいんですよ、25年前で、一日8000円くらいなんで。
鈴木:僕の頃もそれくらいでしたけど、今も変わってないので、物価を考えると割安なんじゃないですかね。
柳瀬:ガテン系はそうかもしれないですね。
鈴木:体さえ動かせばっていうのはね。
柳瀬:日本の方も少なくなってるし。
鈴木:あとバイト話とずれるんですけど、女性の方からいただいたメール。女の子にとってはハードルの高い話題。女子にとって文化系は、「食」と「ファッション」も含まれる。ギャル服の方が安い。お茶代も軽く新書一冊分かかる。男性の皆さんには食の主導権を握ることをお勧めします。
食に気を使えるのが秘訣だ的な。みんな聞いといた方がいいよw
お金を使うところで言うと、頭ぼさぼさな人とか、浪人生みたいな格好の人とかいますけど、服とかお金使わなかったですよね?
柳瀬:お金ないですから。
鈴木:お金の配分の問題で言うと、女子はコミュニケーションに比重をさくほど、つきあいの食事とか、あーその服かわいいーとかになってくると思うんですけど。
柳瀬:64の同世代の女子たちは、ちょうどDCブランドがきたときで、オリーブ、アンアンなんかのマガハの雑誌がいけてるときに、文化系テイストとファッションはセットだったんですよね。
鈴木:オリーブのイラストみたいな。
柳瀬:かりあげちゃんとかね。色々出てきまして。洋服、あの当時からものすごく高かった。ひとそろいで10万近くってのはざらだった。で、そういうところでバイトして、店員になっちゃうわけですけど。「ハウスマヌカン」って単語、みなさんご存じですか?
鈴木:これいま半分くらいの反応でしたね。
柳瀬:ちなみに「ハウスマヌカン」を知らない人、手を挙げてください。
鈴木:ほらほら半分くらいあがりますよ。ハウスマヌカンって単語は、僕、小学生の頃にぎりぎり聞いたかなくらいですよ。
柳瀬:しかも絶対、とんねるずの曲経由ですよね。
鈴木:もちろんw
柳瀬:それはマヌカン末期の話で、全盛期は偉かったんですよ、マルイに人が並んでる時代で。
鈴木:今で言うと、元祖カリスマ店員ですかね。ギャル服が安くてっていうのは実際そうで、男子の服より全然安い。キャミソール一枚1000〜1500円とか。
津田:109が人気なのもそれですよね。安いんだよね。
鈴木:女の子の服って、DCブランドから、オリーブ少女が手作り系に走って、なんつの、安カワ?とかに流れてったの、あると思うんですけど、男の子の服って、値段も下がらないから、結局かっこつけようと思うと、バンドマンでも、ステージ衣装にだけ金をかけて、ふだんは地味なかっこっていう気がするんですけど。
森山:必ずライダースを着てるとかね。一張羅の。
鈴木:森山さんの一張羅は?
森山:僕は、、、勝負パンツかな。新しいパンツをはいてきました。
津田:で、勝負パンツは女性の友だちには見せちゃいけないんですよね。
(会場爆笑)
森山:ええもう。
鈴木:友だちの関係では見せちゃいけない。
森山:その話は長くなるんで。
鈴木:引きずるのかよ!
森山:でもね、僕は高校生の時とか、本やCDよりファッションに夢中でしたよ。今は無印とかですけど、当時はファッション誌読んでたし。
鈴木:何読んでました?
森山:メンズノンノとか。風間トオルや阿部寛がモデルの頃。夢中になって読んでたというか、それが一番重要なんですよ。
鈴木:津田さんとかどうですか。
津田:僕は全然ですね。
鈴木:バンドもやってたんですよね?
津田:やってたけど、高校が私服の高校で、みんな思い思いの服を着るんですけど、そうすると、気を遣う人とそうじゃない人に、くっきり分かれるんですよね。で、気を遣ってない奴もいるからいいやって。男子校の方が気にしてましたね。
鈴木:男子校生から言わせてもらうと、俺はすごい気を遣いましたね。男子校に入って一年生の四月の担任が、同じ高校の出身の人だったんですけど、言われたのが、男子校に来たからって絶対におしゃれに手を抜くなと。女子校三つに囲まれてた男子校だったので、ここに来るまでの間に、校名の入った鞄を見てチェックしてる女子がどれだけいるか、きちんと自覚して身だしなみには気を遣えって、入学したその日に言われて、すごい気を遣いましたね。学ランでしたけど。
佐々木:どんな訓辞なんだ。
鈴木:そこから今日のファッションとかもね。ちなみに今日のハンチングはEXILEを意識したんですけど。
(会場笑)
鈴木:そういう間違った方向に気を遣う人になってしまった。
森山:でもチャーリーはファッションに夢中だよね。
鈴木:夢中ではないけど、、、昔は僕もメンノ読んでた系なので。でも背が低いので、サイズがないんですよ。で、使えないお金が文化系に流れるという。
森山:でも、チャーリーはライフのファッションリーダーじゃないですか。どう考えても一番考えてるよ。
鈴木:ライフのファッションリーダーってどのくらい先端なんだって問題がw
(会場爆笑)
柳瀬:ラジオは見えないからいいですよね。
鈴木:今日のは写真も載りますから。「どんだけー?」って話ですよね。この後は金ない話もしたいんですけど、会場限定で、曲も挟んでいこうかなと。で、「金がなかった」系の歌なんですが、この曲をかけますってさっき中俣さんに言ったら、「曲かけてる間、泣いていい?」つってたんで。
中俣:いや、いい曲ですよ。
鈴木:歌詞の中に「実際俺たちは金がなかった」っていうのがあって、普通はこの曲、ベストアルバムにも、ライブバージョンで入ることが多いんですけど、そのときはみんなでそのパートを、拳を振り上げて歌うんですよね。で、その曲、今日はスタジオバージョンでお届けしましょう。MODSで「TWO PUNKS」。
MP3その2
鈴木:世代的な話で、これはしたいと思ってた話。メール、中学の頃、貧乏が楽しいという幻想を捨てきれず生きてきた。中小企業に主食したり、浪費癖のある嫁さんと結婚したり。貧乏が好きなのかも。俺の世代まではあるけど、下の世代は切実なのでは。ネットカフェで寝泊まりする若者とか。豊かだからこそ貧乏にあこがれる。
ネットカフェ難民問題。24時間のネットカフェに寝泊まりするヤングホームレスが増えてる、ってのが去年あたりから話題になってる。これ、経緯を説明すると、もともとはネットで話題になってNHKまで、とか言われているけど、最初に取り上げたのは週刊金曜日。ここでワーキングプアの実態としてネットカフェに寝泊まりしてるっていうのが書かれてた。これをある大手新聞で「記事にするべきなんじゃないか」って提案して、10月末に記事になった。その翌々日に朝日新聞の大阪版にさらに記事が出て、そこから広がった。なので、広げてしまった手前、落とし前を付けなきゃなと思ってるんだけど、このネットカフェ寝泊まり問題、津田さん、ネットカフェが広まったからこういうのがあるわけですけど、それって貧乏なの?ってあると思うんですけど。ブログとかを更新したり。それって豊かじゃない?と。
津田:さっきの貧乏の問題と関わってくるんだけど、大学の時はお金ないし、CDも中古とか図書館とかを利用する。そう考えると今の方が恵まれてる。でも恵まれすぎてると働く意志もなくなる。96〜7年、自分がライターとしてインターネットに関わるようになって思ったのは、大学時代にファイル交換ソフトや2ちゃんねるなんかあったら、間違いなく働かないで廃人、ニートまっしぐらだったと思う。あれだけで完結してしまう世界だから。ネットカフェも、手軽なコストで時間がつぶせる。メリハリみたいなものが必要だなって。コストが低下することで、かえって社会との接続が失われていったっていう面はあるんじゃないか。
斉藤:食べ物も安くなったから。
津田:マック100円だし。僕が子どもの頃のマックって、超高級品だったわけですよ。
佐々木:大変ですよ。
津田:未だに覚えてますもん。小学校3年の時、学校さぼって食いに行ったマック。狂喜乱舞したもん。
鈴木:そこまで狂喜乱舞しないよw
斉藤:したした。
佐々木:僕、名古屋の実家にいた頃、デパートとかに連れて行ってもらって、マックとかロッテリアで食べるっていうのがフルコースだったのが、いまから20数年前。
鈴木:マックでフルコースって、僕くらいまでかなあ。
佐々木:100円だもんね。
鈴木:高校生が時間をつぶす場所になって。デフレってのもあるけど、子どもが街でたむろせる場所ってのが増えてきた。ファーストフードが24時間になって、一人で若者が居られる場所が増えてくると。技術的な話でいうと、メール。10代の頃注ぎ込んだのが、費用対効果の高い、10本1000円のレンタルビデオ&CD。一時間ほどかけて探し回ってた。文化系にはまるきっかけは、姉のくれたフリッパーズのカセット。趣味の合う兄弟というのが大きな要素になるんじゃないか。もうひとつ思い出すのがYo-Kingの歌詞。お金持ち嫌いは負け犬のひがみ根性。世の中を平明な視点で見るように。
メール、家計簿を付けてなかったのですが、付きに1万円くらい音楽にかけていた。共有はせず、図書館でせっせと借りていた。文京区の図書館が充実していた。YouTubeのようなものも登場して助かった。マキシマムザホルモンは応援したいので買ってた。
アクセスできるリソース、場所が増えた気がする。それをどう評価するか。中俣、佐々木さんの時代、図書館にマンガ、ポップスのCDっていつ頃から増えてきたんでしょう。
中俣:先にレンタルのことで言うと、昔、貸しレコード屋ってのができたのが、僕らが高校生の頃。「U&I」が東京とか千葉に出てくる。今の人と一番違うのは、今はデータベース的に、量をたくさんって感じだと思うんだけど、僕らの頃はそんなにないから、中古のレコードにまとわりついてる歴史とか、映画とか、文脈を若いときは吸収しようとしてた。ジャズでもライナーを読んで位置づけを納得しようとしたり。量がない分、質でカバーしてた。でも今は、見てないんだったら300円で借りられる。そうすると、見てないことが負い目になる。アクセスできなかった時代の方が楽だったという気もする。
鈴木:メール。たまにLPを買う程度。本屋は何冊か雑誌を買う程度。立ち読みも。マンガは立ち読みしまくりだった。帰り道に頭の中で反復していた。情報がなかったときの反復練習が、今の知識に繋がっている。
これは黒沢清さんがゲストに来たときにもしてた話ですよね。一度上映したものが二度と見られないので、必死で覚えてたと。
森山:僕は、図書館やレンタルってあまりできなくて。やっぱりね、売り場で悩んで、それでも買うものっていう。
佐々木:そういう人間のタイプってあるよね。
中俣:僕も借りない。
鈴木:レンタル屋で、最近は試聴もできますけど。
佐々木:俺もう借りるの全然平気なタイプ。
津田:音楽も、試聴してからじゃないと買いたくないって人と、ジャケ買いのプロセスを楽しむ人といる。それはヘビーリスナーかどうかとか関係のない、パーソナリティの問題なんですよ。
鈴木:さっきから二つのことが出てて、ロストジェネレーション(笑)問題、ネットカフェ難民とか、お金がないので、文化系コンテンツにアクセスしようにもネットで止まってるじゃん、って話と、もうひとつが、文化に安い値段でアクセスできる場所が増えて、いっこいっこの重みが減ってきて、人によっては、そういうので薄く広く食ってるもんだから知識がぺらぺらで気に食わないみたいな話になるんだと思うんですよ。
で、いまのはそれってパーソナリティの問題じゃね?と。
佐々木:色々功罪はあるけど、しょうがないって部分もあるわけじゃない。ネットだから色々見られるという側面と、色々見られるだけに、色々、みたいな。両方あるのはしょうがない。いまさっき中俣君が貸しレコード屋の話をしてて、その話はしたいんだけど。「U&I」とかあってね、80年代前半にそういうのが出てきたとき、満喫とかもまだなかったから、俺も行ったことないんだけど、貸しレコード屋は革命的だった。あまり東京ローカルの話をしてもしょうがないけど、神保町に「ジャニス」っていう有名な貸しレコード屋があって、同じ系列で、池袋に「サウンドボックス」ってのがあったんですよ。その両店がものすごいマニアックなわけ。普通のレコード屋さんで買えないようなものも、当時から扱ってて。学生時代とか、毎日行って、5枚くらい借りて、カセットに録音して、翌日返すっていう。
鈴木:それ、一枚いくらで借りられるんですか。
佐々木:忘れちゃったなあ。そんなに高くないんじゃない。
鈴木:ハンバーガーいっこよりは安いくらい。
佐々木:うーん。同じくらい?わかんないけどうん百円くらい。あれがなかったら、音楽ライターになってなかったかもしれないくらいの気持ちがあるくらいお世話になった。お金をかけなくても商品としての文化にアクセスできるっていうのは、そのころから始まってて、それが一方でいまのツタヤみたいなものになるわけだ。Avexも、元々は貸しレコード屋(U&I)だし。そういうものが今、ヘゲモニーを握っていると。他方のジャニスみたいなものは、20数年たっても今なお同じように存在してて、ものすごい差異の先を救っている。その両極化が20年の間に進んでいて、進んだこと自体はある程度しょうがないんだけど、それをどう受け取るかっていうのがパーソナリティの違いになって来るというか。
鈴木:受け取る方はそうだと思うんですけど、今の話、貸しレコードだから最終的にツタヤって話でいいと思うんですけど、ひとつ大きいポイントは、ジャニスには目利きがいて、ある程度フィルタリングしてくれている。今はネットとかで、集合知っていうんですか、みんなが見たいものが上に上がってくる。
津田:その話で言うと、ジャニスはリアル音楽SNSの先駆けなんですよ。全部のレコードにコミュニケーションノートがついてて、アマゾンのレビューみたいな状態になってる。
佐々木:俺書いてたもん。
津田:ジャケットに書くところがあって、よかった、よくなかったっていうのがあった。
鈴木:目利きというか、ジャニスに来てる時点で人間がフィルタリングされてる。つまり、本の問題で言ったらブックオフじゃね?と。安くアクセスできるようになったことで怒ってる作家の方もいるけど、新古書店が嫌いだっていう人が言うのは、目利きが不在で、単に新しいか古いかということだけで値付けをしておいているのが許せないと。文化系リソースにアクセスするっていう意味では、機会は増えたんだけど、その質が変わったことで、腹を立てている人もいるんじゃないかなと。
佐々木:昔、貸しレコード屋だけじゃなくて、目利きがいるような本屋とかでも、いいものがあるわけですよ。そこで学んだ部分もあるんだけど、そこには「いいもの」しかないわけ。だからそれなりに失敗せずにいい道を歩んでいける。でもアクシデンタルな出会いはない。そういう意味では、僕はブックオフが大好きで、全店行きたいくらいなんだけど、ブックオフの方が、「ない」ようなものが、目利きが見落とすようなもの、目利きであるが故に高い値段を付けてしまうものが、150円とかである。ブックオフをインターネットと言い換えてもいいけど、機会が増えた今の方がいいと思う。
森山:それにはスキルが必要ですよね。
津田:でもそういう情報も共有されていくんですよ。ジャニスは神保町で、明治大学のお膝元なんですよ。でも明治の学生じゃなくて、ジャニスの会員で一番多かったのは早稲田だったらしい。高田馬場からみんなお茶の水に通ってた。ジャニスって貸しレコード屋がすごい、なんてのは、そこにいる長谷川Pなんかも常識的に知ってて、伝わっていくんですよ。ブックオフやツタヤも店長の裁量が大きくなってて、そうするとカルチャー系の面白い棚ができてきてる。あそこのツタヤは面白いよって情報も共有されていくし、商品も人も集まってくる。
鈴木:「フラット化」っていうと、本当にみんなフラットになると思ってるけど、ここは論争もあるところで、条件がフラットになるだけで、結果はフラットにならないってのがある。そういう意味で、条件がフラットになって、そこで初めて差別化ができるようになる。メール、何をするにもお金はかかるけど、テクノロジーのシンポがコストを押し下げている。極端なことを言えば、グーテンベルク以前に活字は読めなかった。音楽も映画もそう。IT技術の進展でコストが下がったのだから、今あるテクノロジーで満足を最大化する手段を考えるべき。昔は技術がない中どん欲に吸収して発信してきた。
まとまっちゃったね。
一同:異議なし。
鈴木:異議なしとか言っててもしょうがないからちょっと展開すると、確かにこの方も書いている「大本営発表」みたいなのからは自由になって、フラットに競争できるようになった。じゃあそのとき、お金のあるなしは関係ないよってなったかっていうと、そうはなってない。教育の現場の話をすれば、昔はお金がない中どん欲に吸収してた。じゃあ、今も同じように頑張ればいいかっていうと、そういうわけじゃない。
斉藤:教育社会学の苅谷剛彦さんなんかは、「学習資本主義」って言ってますよね。学習能力が格差として出てくる。いま、ネットを使うにも、そういうのが関わってくる。
鈴木:「ハイパー・メリトクラシー」問題か?とかっていうような、アクセスする能力の格差の問題があるんで、それ、パート3で話しましょう。で、曲は、中俣さんの選曲ですか。
中俣:自分がお金のなかったときに聞いてた曲。ザ・スターリンの曲で、「先天性労働者」。
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2007年05月23日(水) 09:52:18 Modified by life_wiki