HANATOUR'S Traveller2月号

タレント キム・ジョンファ 小樽のロマンで真っ白に染まる


女優中山美穂が「お元気ですか」と叫んでいた映画『ラブレター』で私たちに身近で親しみ深い
存在となった北海道は、冬の純白が自慢。
ふんわりと風雅に雪が降る真っ白い冬を心ゆくまで満喫しようと、キム・ジョンファが「雪の天国」
北海道へ向かった。

「日本には5回くらい来たことがありますが、すべて東京に滞在しました。札幌は初めて訪れた
場所のはずなのに、なぜか初めて来た気がしません。ビールの名前のせいでしょうか?(笑)
とにかく、日本の地名の中で東京の次に耳になじんでいると思います。
ふだん、旅行は好きなんですが・・・誰かが言ってますよね、“冬にどこかへ行きたいならば、
札幌に行け”って。
もともと寒いのは嫌いなんですが、札幌は冬に来てこそ本当の趣を知ることができると言いますよね」

最近ミュージカル公演を終え、しばらく休息をとるために旅行を計画したキム・ジョンファにとって、
札幌は、それほどまでに嫌いな寒さに目をつぶってでも、必ず行ってみなければならない場所だったという。
五色燦然たる熱帯の花々が咲き乱れている東南アジアよりも、真っ白い雪が積もったもの静かな風景を
鑑賞する方が、心を落ち着かせ静かに休息をとるにはよりぴったりだ、と強く思ったようだ。

キム・ジョンファの2007年は、それまでとは異なる試みをしながら活躍した年だった。
ミュージカル「オーディション」公演のほかにも、ドラマ「銭の戦争」で冷淡で薄情なヤミ金業者に
変身して話題を集めたり、ドラマ「ワインを開ける悪魔さん」で国内随一の女性ソムリエ役を引き受け、
柔らかに変身した演技で好評を博した。
1年間休むことなく走ってきたので、再充電の時間が必要であるという理由もある。特にミュージカル
公演を終えてまだいくらも経たず、舞台の興奮がいまだに消えていない状態。
真っ白い雪で忘れていた童心を思い出し、緊張でかちかちに凝固したような全身をほぐすように、
静まりかえっている冬の風景を見ながらセンチメンタリズムにふけってみたい、と心の中をさらけ出した。

韓国から2時間半ほど飛行機に乗り、北海道・新千歳空港に到着するやいなや、服の中に寒風が入り込んだ。
窓の外が一面真っ白だ。「わー」とあちこちで歓声が上がった。

「あらら、足がぽこぽことはまってしまいます。ほんとにキュッキュッと音がしますね。
たくさん雪が降るということは知っていましたが、これほどまでとは思いませんでした。」

寒さを忘れたかのようにキム・ジョンファは、真っ白い雪に足跡を残そうと、あちこちぴょんぴょん
飛び回り、同行した一行も、カメラを取り出して写真を撮ったり、雪球を投げたりと、はめをはずした
振る舞いに無我夢中だ。
まるで初めて雪を見たかのようにひたすら浮かれている一行を見守っていたガイドが、
「このくらいなら雪のうちに入りません。これからうんざりするくらい雪を見ることになるでしょう」
と言って、興奮を鎮めた。

本当に旅行の3日間、雪は休まず降った。
北海道の人たちにとって、雪は特別やっかいな代物でも、あるいはうれしい存在でもないかのように
感じられた。人々は雪が降っても傘を差さなかった。北海道に滞在した3日間、雪合戦をする人々を
一度も目撃しなかった。雪だるまを作る人もいない。
1日のあいだに3、4回も雪が降ったりやんだりするから、かなりの雪でも皆普通のことのように
平然としている。ちょっと積もればさっと掃くだけで十分で、一寸先が見えないくらいに雪が降るときは
そのまま仕方なく全身に雪を浴びながら行き来する。
映画「ラブレター」の中の雪がファンタジーの雪だったなら、旅行中に見る雪は「日常の中の雪」
「生活の中の雪」だった。
興奮を巻き起こした雪は、時間の経過とともに、不慣れな旅行地での緊張と不安も一緒に溶かしはじめた。

オルゴールが鳴り響く童話村 小樽

ひととき「オゲンキデスカ?」という言葉が流行語になった時があった。雪に覆われた北海道の
小さな港・小樽で繰り広げられた心の寂しい人の話を盛り込んだ「ラブレター」。その舞台となった
小樽は、韓国人が北海道でもっとも行きたい観光地の第1位だ。
日本の奥様たちが「冬のソナタ」のロケ地を訪ねて春川や南怡島に行くように、韓国の観光客は
「ラブレター」の跡をたどって、色内交差点、日本郵船小樽支店、小樽運河工芸館を必ず訪れる。

色内交差点はヒロコが恋人の跡を訪ねて小樽へ来る途中で、郵便ポストに手紙を入れようとする
イツキとすれ違った場面が撮影されたところ。
建てられてから100年が過ぎた日本郵船小樽支店は、イツキが勤務していた図書館として登場した。
また小樽運河工芸館は、ヒロコの友達アキバが働いていたガラス工房の撮影地だ。

「映画は見ていません。でも、話はよく聞くので、知っていますよ。映画に出た場所に到着したら
教えてください。私も雪に向かって『オゲンキデスカ?』と叫んでみたいです。」

小樽を訪ねる旅行客は、たいてい運河から旅行を始める。運河の起点の浅草橋の上は、いつも
旅行客で混み合う。前を見ることができないくらい降りしきる雪も、映画の主人公になってみたい
という欲望を萎えさせることはできないようだ。

19世紀後半の開花期、函館が北海道の中心地だった時代、小樽は北海道の金融中心地だった。
「北日本のウォール街」と呼ばれていた痕跡を、オルゴール堂や工芸館に変わった新古典様式の
優雅な石造建造物から探すことができる。
札幌など北海道の他の都市が急激な近代化の流れに乗っている一方で、小樽は明治時代の郷愁を
保存することに努めてきた。その復古風の街が観光客を呼び寄せるのだ。

浅草橋は、運河観覧ポイント。しかし、大変な期待をして訪れた運河は、雪が積もっているからか、
調和の取れた美しい建物が本来の魅力を失い、わびしくもの寂しく感じられた。会えて嬉しかった
雪に対して、恨めしく感じ始めた。昔の石造りの建物のあいだを悠々と流れるロマンチックな
運河の姿は、雪が溶けるまでは見るのが難しいようだった。

残念な気持ちをなだめるために、小樽の有名な手作りガラス工房やチョコレート屋、時計店、
骨董品店などが集まっている北一硝子街へ向かった。ヨーロッパ都市の路地のように、道の両脇には
小さな商店が建ち並んでいる。失望感で憂鬱だった一行も、いつの間にやら再びはめをはずした
振る舞いをし始めた。
派手で豪華な色彩のガラス工芸店の前で、キム・ジョンファの足が止まった。

「ここはクリスマスが終わっていない童話村のようです。この爪くらいの大きさの猫を、
ちょっと見てください。どうしてこんなにさまざまな表情が出せるのでしょうか。人形も、
服や靴が全部ついています。これらが全部手作りだなんて信じられません。」

工房に入るたびに、アキバがぱっと笑って迎えてくれるような気がした。
道の両側のどの家も、100余年の歴史を大切に保存している由緒ある工房だが、よく見ると
それぞれ独特な調和を持った美しい個性で、工房を飾り付けている。

メルヘン交差点が近づいてくると、人々が群がっている場所から音楽が聞こえてきた。
入口を一歩入ると、さまざまなメロディが耳をくすぐる。ガラス工芸と並んで小樽でもっとも
有名なオルゴールを見ることができる、オルゴール堂だ。3階建ての建物全体がオルゴール
売り場であると同時に展示場だ。
ここには、19世紀後半に製作されたさまざまな形態のオルゴールを見ることができる。
時計台、動物、回転木馬、宮殿など3000余種類の販売用オルゴールは、魂を抜かれて
しまうくらい美しい。形態と同様に、メロディもさまざまだ。
ミュージカルをして歌や楽器など音に関心が深まっているキム・ジョンファは、いくつかの
オルゴールを選び、耳の近くに当てて、調子をあわせて鼻歌でふんふんと歌った。

「ミュージカル<オーディション>で私が担当した配役はバンドのボーカルでした。
歌はもちろん上手に歌わなければなりませんが、楽器も上手に扱わなければならなかったんです。
ボーカルトレーニングとともにピアノレッスンも一生懸命アタックしたので、ミュージカルで
出た曲はとても上手に演奏することができました。
早晩<オーディション>が映画になります。同じ配役にキャスティングされて、今はギター
レッスンを受けているんですよ。今度の旅行にギターを持ってきたのも、合い間合い間に
練習をするためです。
今、私がギターを弾けば、ちょうどこのオルゴールの音のように聞かせることができるでしょう。
まだ、弦を一本ずつはじく程度なんですよ。」

空港で会った時、彼女の肩に担いだギターの使い道が気になっていた。「撮影の小道具として
持ってきた」として、「雪とギターが調和するのか?」と頭の中でイメージしてみたりした。
人力車に乗った日本の民族服を来た男たちや、バイオリンを弾く街の楽士がいる小樽なら、
とてもよく調和すると思った。ただし、雪の中に隠れた小樽の原色が現れ、復古的なロマンと
情趣がよみがえればの話だが。

オルゴール堂の前には、カナダ・バンクーバーから寄贈された蒸気時計がある。15分間隔で
白い蒸気を噴き出して音を出すこの時計は、記念写真のベストスポット。まるで銀行のように、
列が長く延びていた。

2時間あればほとんどの観光名所を見てまわることが出来るくらい、小樽は小さい都市だ。
記念写真を撮ってくれた写真師は、「4時には日が沈むので、時間的に余裕があるなら、また
浅草橋に戻ってガス灯が火をともす運河を鑑賞してみたら?」と話した。
運河に沿って並ぶ88本のガス灯がともれば、きらきら輝いた明かりが揺れ動いてひときわ
風雅な趣を味わうことが出来るはず。しかし私たちは、日が沈む前の札幌を見るために、
急いで車に乗った。

真っ白な雪の都市 札幌

小樽から札幌市内までは車で40分ほど。市内に近づいてくると、往来の自動車もきらめくネオンも、
徐々に目立ってくる。
札幌市は碁盤目のようによく整備されていて、初心者でも簡単に旅行することが出来る。市の中心に
ある大通公園は、札幌市内を東西に貫く市民公園だ。札幌を訪れる観光客が旅行の起終点に利用する
名所中の名所で、札幌雪祭りとビール祭りの舞台でもある。

私たちが到着した時は、ちょうどホワイトイルミネーションが終わり、造形物がまさに撤去されよう
としていた。札幌の夜を華麗に彩る光の祭典を見逃してしまったのが残念で、それならせめて雪祭りを
見たいと思ったが、残念ながら雪祭りは2月に開催されるため、今はその準備をしている最中だった。

祭ではなくても、札幌には見て楽しむところが多い。大通公園の近くにあるテレビ塔と時計台も、
その中のひとつだ。特にテレビ塔は公園の中ににょっきりとそびえていて、遠くからでも見つけやすい。
1881年に建てられた時計台は、今でも澄んだ鐘の音を聞かせてくれる。
時計台からしばらく歩くと、赤いレンガの重厚な建物が見えてくる。北海道開拓の歴史を刻んだ、
北海道庁旧庁舎だ。約250万個のレンガを使用して米国風ネオバロック様式で1888年に
建設されたので、現代的な建物のあいだにあって断然目立っている。
大通公園とテレビ塔、すすきの駅のあいだにある地下街には、衣類、飲食物などを売るさまざまな
商店が入っていて、時間を過ごすにはいい場所だ。

韓国とは違う独特なアクセサリーを見るために、キム・ジョンファと一行はウィンドウショッピングを
楽しむことにした。札幌の数多いショッピングプレイスの中で私たちが選んだのは、札幌駅と隣接した
地上38階、高さ173mのJRタワー。2003年にオープンしたここは、147mのテレビ塔
よりも高い展望台があって、そこに登れば札幌市街地と近隣地域が一目で見下ろせるホットスポット
として有名だ。

新年を迎え、ほとんどの商店がバーゲンセールを開催中だった。ふだん慎重に買い物をするため、
衝動買いは好きではないというキム・ジョンファも、30%割引というピンクの靴に財布を開けた。

「ジーパンに合わせて履けばかわいいと思います。最後の1足だけ残っていましたが、
それが幸いなことに私のサイズにぴったりでした。おそらく私がこの靴のあるじになる運命
だったんだと思います(笑)」

ショッピングでエネルギーを使ったからだろうか?だんだん空腹になってきた。札幌はラーメンの
本場として有名なところ。その上、世の中で一番大きくてさまざまな種類のカニ料理で有名な
ところだ。
JRタワーと連結されたビックカメラビル10階のラーメン共和国では、北海道中の有名ラーメンを
一度に味わうことができるくらい、数十のラーメン店が入居している。
熱いラーメンスープによだれが垂れたが、札幌での晩餐にはカニの方がふさわしい気がした。

札幌でカニを食べる時、まずはじめにその大きさにびっくりする。大人の顔の大きさくらいの
カニの甲羅に子供の腕くらいの脚がついていて、1匹あれば4人がたらふく食べても残るほどだ。
身がまるまるとしたキングクラブにまずは手が伸びるが、北海道の名物は毛がもさもさ生えた毛ガニ。
価格が安い方ではないが、脚が長い大ガニと毛ガニを味わうことも、札幌旅行の味の思い出として
記憶されるだろう。

さらにドライな日本のビールの元祖である札幌ビールをひっかければ最高だ。普段ビールをさほど
好きではない人も、スッキリした後味が秀逸な札幌ビールを飲み終えたらビールマニアになる程。
酒をあまり飲めないというキム・ジョンファも、「札幌でビールを味わわないで帰ってくることは
札幌旅行をしていないも同然だ」という一行の説得に、少しずつごくりと飲んだ。
「鼻の先がスーッとする、清涼な気が漂うようですね」
ひと口だけでも十分にすばらしい札幌ビールの味に酔ったようだった。

「寒いのが嫌いで、冬になるとどこかしらに入ってなかなか外には出ないんですけど、こんな風に
長いあいだ雪に降られながら歩けたことに、自分でも驚いています。『冬は寒さがいい』と、
ここに来て初めて感じました。ソウルに戻ったら、うんざりするほど降るこの雪がきっと恋しくなる
でしょう。思う存分雪合戦でもして帰ろうと思います。あ、ギターの練習もしなければならない
けど、しきりに外に出たくなりましたよ(笑)」

華麗な雪祭りとイルミネーションは見ることができなかったが、頭と肩にこんもりと積もる雪を
鑑賞するだけで十分に幻想的だった北海道の思い出。枯れた枝と索漠としたセメント道に、
やわらかくふんわりと覆いかぶさるパウダースノーの感触は、10年過ぎても叙情的で純粋なカラー
として記憶される『ラブレター』と同じように、冷たいままの手に、心の中に記憶されるだろう。


スキーマニア キム・ジョンファに学ぶ! 女王のように楽しむ 札幌スキー旅行


パウダースノーと整った雪質、静かなコースで疲れるまで楽しむスキー
日中たまった疲労を癒してくれる温泉まで
どんな映画の中の主人公よりも素敵に
雪の中を遊泳するキム・ジョンファのスリル満点北海道スキー旅行

経歴7年のスキーヤー、キム・ジョンファは機内で、銀色の雪の中を心ゆくまで疾走する
姿を思い浮かべてものすごく期待していた。彼女が行くところは積丹連峰と日本海を眺望する
雄大な景観、そして最高のパウダースノーを満喫することができるキロロスキーリゾート。
新千歳空港から車で2時間ほどで到着するキロロリゾートは、日本の中でも雪質がよいことで
有名で、日本人でさえ生涯一度は行ってみたい冬の旅行地のひとつとして数えられるほどの
スキー天国だ。

札幌市内の雪がはらはら舞い散る雪だとしたら、ここの雪はちょっと前も見えないくらい
どんどん降りしきる雪だ。ただ上から下へまじめに降る雪ではなく、横に降ったり、下から
舞い上がったりする。ここの人々はそんな雪を「吹雪」と呼ぶのだが「飛び散り振り撒かれた
雪」という意味だ。ホテルの輪郭が見えないくらいに真っ白い中で浴びる自然雪は、映画
「ラブレター」の中の背景を思い出すほどに壮観だ。

世界的な楽器会社であるヤマハグループが運営するリゾートだからか、ロビーに入るとまず
ピアノが真っ先に目に入る。武装という表現がふさわしいくらいに体を包んでいたジャンパーと
帽子を脱ぐと、ようやく柔らかくて品のあるピアノの旋律が聞こえてきた。
「ジョンファさん、いちど演奏してみたら?ミュージカルで鍵盤演奏をしてきたそうじゃないか」
一行の中のひとりが彼女をピアノ舞台へ導いた。
「3ヶ月びっちり練習して臨みました。ミュージカルに出てくるロック音楽ならお聞かせすること
はできますが、こんなクラシックな雰囲気とは調和しません。あとで私の部屋にいらっしゃったら
ひと月練習したギター演奏をお聞かせします(笑)」
たった3ヶ月の練習でピアノを上手に演奏できるように、何でもすぐに身に着ける、と言って
同行しているマネージャーがこっそりキム・ジョンファを褒めた。
「あしたジョンファがボードに乗るのを見ればわかるはずです。ボードに乗るようになってから
1年しか経っていないのに、すばやくエッジを効かせながら下りて来るさまは、とても落ち着いて
いて悠然としています」

「日本に来る前にスキー場へ行ってきました。ミュージカルが終わって寂しいスタッフたちとスキー場に
合宿に行ったんですよ。ヨンピョンのベアーズタウンに行ったのですが、何回も滑れませんでした。
人が多すぎるので、ぶつかるかと思って緊張するし、リフトで待つのも退屈して3回くらいしか
滑りませんでした。雪もそれほど無くてよく滑れるという感じでも無かったし。
ここは雪が多くて、ホテルの裏山でも滑れそうなくらいですよね」

スキー場には翌朝行くことにして、体の緊張をほぐすのと、北海道の雪に慣れるために、軽い散歩を
楽しむことにした。ホテル周辺は職員たちがせっせと掃いているのに、雪がふくらはぎまでスポッと
はまる。わが国のソルピのような雪靴を使って滑るように雪上を歩いて、露天の温泉があるところまで
着くと、小さい工房が目に入る。小樽で見たオルゴールを実際に作ることができる体験場だ。
主に幼い子供を対象にしているプログラムだからか、テキパキやれば15分でひとつ完成する。9種類の
オルゴールメロディの中からひとつ選び、いろいろな宝石やガラスの人形を装飾して四角形の透明な
ガラス板につければ完成。キム・ジョンファが選んだオルゴールは、悲しげなメロディが心を穏やかに
鎮静させてくれる「オサカ・ソング」。自分で作ったオルゴールは小さい箱に入れ記念品として
持ち帰ることができる。

銀色パウダーで楽しく刺激的な滑走

朝早く、寝足りない感じで起きて、目を開けるやいなや、窓の外に昨日よりもっと多い雪が降っていた。
日本の小説家・川端康成の言葉がふさわしかった。「国境のトンネルを抜けると雪国だった」
心ゆくまで味わえと言わんばかりに、風までも厳しかった。ひどい吹雪だ。腿まで積もった雪を
掻き分けてゴンドラに乗ることに成功した。頂上まで所要時間は15分。高台だからか、頂上の吹雪が
とても厳しい。ゴーグルをつけなければ前が見えないくらいだ。
ゴンドラから降りると、心細い私たちを見守るため同行してくれていたキロロスキー場管理者の
山田さんが「防寒装備を適切に持ってきたなら、韓国では楽しむことのできない吹雪の中のスキーが
新しい快感をもたらすでしょう」と言って気力を出させてくれた。

キロロでは全部で21のコースがあり、実力に合わせて上級、中級、初級者ゲレンデの中から選ぶことが
できる。韓国では最上級者だけがゴンドラに乗り一番高い所にあるゲレンデを滑ることができるが、
キロロでは初心者の幼稚園生でも、ゴンドラに乗り頂上からスキーで降りることができる。数日間
積もった雪がパウダーのように美しく柔らかく、たまに転んでもふわふわしていて怪我をする心配が
無いからだ。その上傾斜が緩やかで、人も混み合っていない。すぐそばをかすめて威嚇する人も、
ぶつかってくる人もいない。パパについて滑る5歳くらいのちびっ子を見て、キム・ジョンファも
勇気を出して吹雪を突破しゲレンデに近づいた。

キロロだけでなく北海道の多くのスキー場のゲレンデは、短くて300メートルから、長いと4キロメートル
にわたる。目に付く人工の安全網も無い。ゲレンデの両脇の自然雪をそのままにしておけば、腰まで
達する雪が自然にスキーコースの境目となる。ボードで滑り降りる前に記念写真を撮ろうと、たまに
現れるスキーヤーを避けるために端まで行くと、腿までずっぷりはまった。

「まるでシベリアに来たみたいです。こんなに深く雪にはまったのは生まれて初めてですよ。
ここで“オゲンキデスカ”を叫べばぴったりですよね」

雪を降らせる空を見上げるキム・ジョンファの様子を見て、「ラブレター」の最初の場面、ワタナベ
ヒロコが雪が降る平原の麓から空を見渡し頭を後ろに反らしていた姿を思い出した。

今度は北海道の雪のよさを味わう番だ。除雪機で激しく振りまく人工雪に比べて、小麦粉のように
柔らかい自然雪に板がすいすい滑る。1週間に6日は雪が降るという北海道。わざと人工雪を作る
のではなく、逆に夜のうちに積もった雪をどかすのがここのスキー場の日課だ、という言葉が
誇張ではないようだ。誰も踏んでいない雪原をスキーやボードで滑り疾走する感じは、感動そのものだ。

邪魔をする人がいないので、スキー初心者でも心ゆくまで腕前を披露しながら左端、右端へターン
できて、まさに皇帝スキーとはこのこと。
雪花が咲く杉と白樺林の間をぬって降りていく気分はまるで山岳スキーのようだ。長いゲレンデを
ひとりで降りてみれば、スキーコースを教えてくれる杉林だけが目の中を通り過ぎる。

「しばらく滑り降りてまわりを見たら、誰もいないんです。とても寂しくて怖かったのですが、
1分くらい経ったら寂しさがむしろ気楽さに感じられました。韓国ではできない滑降もして、
ちょっとオーバーにターンもしてみて…そんなことをしていると、倒れるには倒れるんですが、
保護帯をしていなくても痛くなく、本当に名前のとおりパウダーに横たわる気分でしたよ」

スキーとボードで滑るのに飽きたころ、はしゃぐように雪原を駆けるパトロールのスノーモービルが
目に入った。普通は危険な状況の時だけ乗ることができるスノーモービルに、キロロではいくらでも
乗ることができる。
ホテルのすぐそばにスノーモービル体験場があって、簡単に操作方法を習うだけで雪原を走らせる
ことができる。体験場の前庭で何周か回ってスノーモービル運転に慣れてしまえば、ホテルの裏山の
頂上までスノーモービルに乗って飛び出すことができる。安全要員が少なくとも2名以上前後に
ついて引率するので、子供たちでも安全に乗ることができる。

終日スキーをすれば、当然手も足も全身疲れる。キロロリゾートには、疲労を一度に回復できる
スパとエステティックショップが用意されている。スパで受けるさまざまなマッサージは、多少
値段が高いが高いなりのクオリティを得られる。
その上、露天の温泉に入って舞い散る雪が降る夜空を鑑賞しながらゆったりとした自由を満喫する
のもよい。室内プールで雪の代わりに水に潜って、泳ぎながら疲労を取ることもできる。

「スキーは高校以来滑っていますが、ボードは昨年初めて滑りました。合宿をあわせても、まだ
5回も滑っていないと思います。満足なフォームを作るには練習不足だったんですが、ここに
来たらショートターンですばやくダウンヒルをして、ロングターンでゲレンデの左右をゆったりと
遊泳もして、またパウダースノーに埋もれて安心して空を眺めてと、やってみたかったことを
全部やれたので、次は韓国でも上手にゲレンデを滑ることができると思います」

キム・ジョンファのうきうきした体験談のように、騒々しい音楽も、スキーヤーの最大の敵である
「人間障害物」もないところ。
ただひたすらパウダーのような美しく柔らかい雪と、真っ白い枝が魅力的な白樺がゲレンデを
守っている北海道では、スキーヤーたちのロマンであるゆったりとしたふわふわな冬が待っている。
2008年11月09日(日) 23:36:43 Modified by jung_hwa